楽屋トーク

「あー、きっつぅ……」

「ええ、疲れたわね今回は……テイク49はさすがに……」


 更衣室で衣装を脱いでいると、小雪が呻くので頷く。今回の依頼は本当にハードだった。ムダにバイタリティの高い小雪もさすがにくたびれたのだろう……


「んーん、おっぱいがキツうてキツうて。のぞみちゃん、つよー巻き過ぎちゃう?」

「は?」


 とてもドスの効いた声が出た。見ると、サラシをほどいて、ムダに体積のある脂肪の塊を解放している。こいつが主人公の男性に扮する上で最も困難だった点で、だからわたしが押し返してくる弾力に対して思いっきり巻いたわけ、なんだけど……。


「ムカつくわね……そのままつぶれてたらいいのに」


 彼女の胸元に浮いた汗を睨みながら言った言葉には、繰り返しに繰り返したお芝居よりよっぽど感情が乗っていた自覚がある。


「せやかてウチも好きでおっきくなったワケやないやないもん~」

「ああもー早く服着なさい、バカ!」


 訴えるようにくっついてくる小雪をひっぺ返して、トレードマークのパーカーを押し付けた。


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