はるかな星が、ふるさとだ!?
シン・アルティマズィーベン製作委員会(仮)
『シン・アルティマズィーベン製作委員会』
ホワイトボードに大書された仰々しいタイトルに反して、私立泊木大学映像研究会の部室を満たす空気は冷え冷えとしたものだった。
「今こそ!
シン・アルティマアインの大ヒットで世間の注目が往年の角山特撮作品に集まっている今こそが、我ら私立泊木大学映像研究会が、どこよりも誰よりも先にこの日本特撮作品における金字塔をリブートすべきなのだ!!
そのため必要なのは、最終話史上最大の進撃のスバルとリリィのシーンを演じられる俳優!
アルティマズィーベンと怪獣の巨大特撮をかなえる着ぐるみとジオラマ!
そして諸君の熱意!」
白けた顔のオーディエンスとの温度差をものともせず、熱すぎて空回りしているプレゼンを打つ、野暮ったい大きな眼鏡の奥で瞳を輝かせる男が一人。名前を安野壌と言う。三回生だが、二回留年している。
いらすとやの、「光る眼鏡をかけてどや顔する男性」がデカデカと印刷された企画書を前にした他の部員の内心を代弁すると、こうだ。
『また、アンノジョー監督が無茶なことを……』
いつも無謀で無茶な作品を企画しては問題を起こすため、名前にかけて「案の定」またやらかした、という意味を込めたあだ名で呼ばれているのだ。
「けどどうするんですか。アンノジョーの言うレベルの演技が出来る部員はみんな他の作品に取られてますよ」
「それにジオラマでこんなに火薬を使うなんて大学側から許可降りないんじゃないの?
アンノジョー監督、去年のボヤ騒ぎ忘れたとは言わないよね?」
「う、それは……それは申し訳ないと思っている。しかし……ボクは失敗からは学ぶ男だ!!
同じ失敗は繰返さない!
だからみんなついてきてくれ!!」
鋭い指摘にたじろぐも、再び暑苦しく語るアンノジョー。部員たちのため息が机に重く積み重なる。
「そうなのよね……失敗の繰返しはしないわコイツは……毎回新しいやらかしを重ねてくるのよね……リアリティー重視だ!って本物の蛇を持ってくるとか」
「ホント、毎度毎度新鮮なスリルを感じさせてくれるよね……乱闘の演技支持に熱が入った結果女優にラッキースケベかましてぶん殴られたり」
「そのせいで8割方撮り終わってた俺の作品の入ったカメラが……うっ頭が……」
「毎年やらかすせいで学園祭の申請が大変なんだよね……今年は来ないでくれって泣かれたもん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます