お金まかせは却下よ

 ひとしきり騒いだ後、なんとか息を整えて話を戻す。


「で……部室を手に入れるったってどうするのよ、二人しかいないのに」


 なにせ『こゆきとのぞみのお悩み相談室』なのだ。最初からメンバーを増やすことを想定していないのがこのサークル。大学側が首を縦に振るとは思えない。


「そこは、ウチのこの溢れる財力でやな――」

「それは却下」


 小雪はどこから湧いてくるのか不可解な資金を依頼人の悩み解決に当てることが度々ある。学生のバイトでは賄えるのかはなはだ疑問だけれど、わたしが見ている前で買収だがなんだかに手を染めさせるわけにはいかない。


「ふふ、真面目やなあ~のぞみちゃんは。ほな、のぞみちゃんの気にいるやり方で目指そか。いーっぱいお悩み解決して、部室のほうからウチらに使って下さいって言ってくれるようにしたろ」


 本気なのか冗談なのか分からないいつもの調子で小雪は言ってのける。お金もだけどその自信はどこから湧いてくるのか。

 そこでカランとドアの鈴が音を立てて、思い詰めた顔をした女子学生が入店してきた。不安げに店内を見回している。匿名のメッセージを送ってきた今回の依頼人だろう。わたしはため息をついて立ち上がり、彼女を手招きした。

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