お金まかせは却下よ
ひとしきり騒いだ後、なんとか息を整えて話を戻す。
「で……部室を手に入れるったってどうするのよ、二人しかいないのに」
なにせ『こゆきとのぞみのお悩み相談室』なのだ。最初からメンバーを増やすことを想定していないのがこのサークル。大学側が首を縦に振るとは思えない。
「そこは、ウチのこの溢れる財力でやな――」
「それは却下」
小雪はどこから湧いてくるのか不可解な資金を依頼人の悩み解決に当てることが度々ある。学生のバイトでは賄えるのかはなはだ疑問だけれど、わたしが見ている前で買収だがなんだかに手を染めさせるわけにはいかない。
「ふふ、真面目やなあ~のぞみちゃんは。ほな、のぞみちゃんの気にいるやり方で目指そか。いーっぱいお悩み解決して、部室のほうからウチらに使って下さいって言ってくれるようにしたろ」
本気なのか冗談なのか分からないいつもの調子で小雪は言ってのける。お金もだけどその自信はどこから湧いてくるのか。
そこでカランとドアの鈴が音を立てて、思い詰めた顔をした女子学生が入店してきた。不安げに店内を見回している。匿名のメッセージを送ってきた今回の依頼人だろう。わたしはため息をついて立ち上がり、彼女を手招きした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます