じゃあ合格やな
「俺は、大人になるには……あの人に、あの人の家族に、向き合わないといけない気がするんだ」
それが、あの夢を見る、意味だと思うから。
しゃべり終えると、喉の乾きを感じた。いつの間にか車の中を通る風に潮の香りがしていた。
「なるほどなぁ、立派なもんや。どうや、のぞみちゃん?
水替家の嬢ちゃんに会わせてもええ?
のぞみちゃん、反対しとったもんな。いたずらに辛い過去に直面させるな、言うて」
俺にペットボトルの水を放り投げながら、白い髪の女は運転席に語りかける。
「……今の話聞いてダメとは言わないわよ、後は本人同士の問題でしょ」
「あ、のぞみちゃんちょっと泣きそうになっとる」
「うっさい、運転に集中出来ないでしょ!」
「ふふ、じゃあ合格やな、よかったなあ直貴くん」
どうやら、あの日の女の子とすでに関わっている「相談室」の彼女たちに、俺は認められたらしい。少し胸の中が軽くなって、顔を上げた俺は、車が角を曲がった瞬間目の前に広がった青い海のまぶしさに目を細めた。
あの日訪れた海水浴場は、今も賑わっている。
オープンカーの向かう先、一軒の民家の前で、大きな麦わら帽子をかぶった女性が立っていた。
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