ふたりのマウントポジション?

(私はいま、事件の現場に来ています キタコレ

キマシタワー)


 胸の中でつぶやき、ごくりと唾を飲み込む。目の前の尊い光景がこの現実に存在しているという事実に感謝したくなり、思わず手を合わせた。

 

 私の名前は春崎もみじ。漫研の合評会に出す作品に恋愛漫画のネタに悩んでいた私は、同じ大学のなんでも解決してくれるというサークル『こゆきとのぞみのお悩み相談室』の二人に相談した。

 そこで見せつけられた二人の関係性があまりにも百合的に美味しかった私は……!

 これしかない! と閃き、頼み込んで二人をモデルにした関西弁最強人たらしお姉さん×生真面目ツンデレ黒髪美少女の読み切り百合短編を締め切り3時間前に描き上げたところ大好評。

 そのお礼をかねて(さらなる百合ネタを求めて)贔屓の和菓子屋さんのお饅頭を持って、今日は茶道部の手伝いをしているという二人を訪ねたら……


「ちょっ……さっさとどきなさいよ……っ」


 耳まで真っ赤な顔になって下から見上げる望海のぞみさん。


「ふふ~ん、こうやって見下ろすのぞみちゃん、やっぱかわいいわぁ」


 色っぽく舌なめずりする小雪せんぱい。長い黒髪を畳に振り乱した望海さんの顔の横に両手をつき、覆い被さるようにして小雪せんぱいが見下ろしている。その名前にふさわしい純白の髪が、黒髪と見事なコントラストを演出している。

 すばらしいのは、にらんでいるつもりの望海さんの瞳がやや潤んでいるて、力の抜けた手が無防備に投げ出されている……口では拒否していても完璧な『受け入れ体制』を取っていること。

 そして今にも獲物をいただきますといわんばかりの体制の小雪せんぱいの爛々と輝く瞳。

 これ以上ないほどの構図。1秒かけて目に焼き付け、そしてスケッチブックを取り出していそいそと鉛筆を走らせるーー




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る