はじめてのお悩み
「ふむ、大切なお守りを失くしてもうたと」
「そうなの……田舎から一人で出てきて、あれがないと……」
「よーしよし。な、ウチらが一緒に探したるから元気出しぃ、みーこちゃん」
同性、同じ新入生同士とはいえ初対面の相手の懐にスルスル入って親しげに事情を聞き出す小雪の手腕に舌を巻く。いつの間にかあだ名までつけてるし。
「探すって言っても、キャンパスの敷地は広いのよ」
釘を刺したが、小雪はまったく動じない。
「みーこちゃんの話をまとめると、正門で記念撮影した時にはスマホとおんなじとこに入ってたわけやから、落っことしたとしたらそっから大講堂とこの学部棟までのどっちかには落ちてるはずや。とりあえず二手に分かれれば効率ええやろ」
「それは、そうかもしれないけど……」
言葉を濁すわたしと違って、小雪は定かでない根拠で『みーこちゃん』を安心させ、失くしものを探そうとしている。そこに迷いはない。
わたしと小雪。どちらが目の前で涙を浮かべている子のためになるかは明らかだ。
なんだかそれが悔しくて、わたしは一度手を握りしめて、また開いた。
「……わかったわよ、今日は夕方から冷え込む予報だから、早く見つけましょう」
眉をきっと上げて小雪に告げると、満足そうに目を細めた。
「ふふ、はじめてのお悩み解決、やな♪」
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