何そのサークル名は!?
「アンタ、いつの間にそこに!?」
入試の時と同じ黒いパーカーの彼女は、仰天したわたしを愉快そうに眺めていた。
「ウチを求めるのぞみちゃんの波動をキャッチしたもんやから飛んできたわ」
「何言ってんのよコイツ……」
軽く引きながら、しかしここにいるということは彼女も合格したのだと気付く。
「……アンタ、あんなにふざけててよくここ受かったわね」
「のぞみちゃんと約束したもん、トーゼン、や」
ふふん、と白く艶やかな髪をかき上げる得意げな仕草。いちいち妙に癪にさわる奴だ。
「こっちがどんだけ苦労して勉強したと思ってんのよ……」
「なあなあのぞみちゃん、合格ったから、な、ええやろ~?」
そう言ってこゆきはまた身を乗り出してわたしの顔を覗きこんできた。
底知れない深さの瞳の奥から、詰め寄られて目を丸くしているわたしが見つめ返している。
大学デビューだと気合いを入れて選んだ割にはあまり似合っていないチークに口紅。結局染めるのをやめて高校までのポニーテールに落ち着いた地味な黒髪。
正直、目の前の女の奇抜な格好に比べたら没個性なわたしが何故目を付けられたのか疑問だし、気は進まないけど……確かに約束してしまったのはわたしだ。
約束は守る。昔、よく遊んでくれたお姉さんから叩き込まれたことだ。こんなところでそれを裏切るわけにはいかなかった。
「……わかった、わかったわよ。アンタがやりたいサークル?
わたしでよければ付き合って上げるから」
「よっしゃ!
ウチと楽しい楽しいキャンパスライフとしゃれこもうやないののぞみちゃん♪
ウチとのぞみちゃんの、
"こゆきとのぞみのお悩み相談室"でな!」
「ちょっと待ちなさいよ何そのサークル名は!?
個人名剥き出しじゃないの!!」
慌ててサークル名の訂正を求めるわたしをよそに、無情にも入学式の始まるアナウンスが講堂に響いた。
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