一期一会?

 最後の科目の終了のチャイムが鳴り、詰めていた息を吐くと、隣の席の白髪黒ずくめの女は緊張と疲労を全く感じさせないどや顔で言ってのけた。


「それじゃあ入学式でな、

のぞみちゃん!」


 机の隅に置いた生徒証をいつの間にか見ていたらしい。隣席とは言えカンニング出来ない距離があるのに。あと、わたしの名前はとっさにそうは読めないのでそこも驚いた。


「アンタはなんていうのよ?」


 こっちだけ名前を知られてるのは癪で、とっさに口に出した。いつの間にか彼女の机の上は魔法のように片付いていたから。


「ふふ、こゆき、や」


 それだけ言って彼女は立ち上がり、会場を出て言った。

 

 ヘンなやつに絡まれたものだ、もう会うことはないだろうけど……いや、会わないといいけど。

 半ば希望的観測でそう思った。


 この時には。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る