鎖も太い金属糸と言い張る後輩美少女ダンジョン配信者と巫女服先輩美少女ダンジョン配信者

「なんで卯佐美達は鎖で繋がれてるウサ?」


 鎖で繋がれていると言っても牢に囚われているワケではない。引き締まってクビレのある卯佐美の腹部を挟み込む金属の枷から伸びる鎖はもう一つの枷と繋がっている。奇しくもその枷は卯佐美のしているバニーカフスとよく似た形状をしていた。


//コラボだー!

//みこPONみこPON


 鎖の先、卯佐美と同じく腹部を枷に挟まれた美少女がもう一人。小さなお友達リスナーからは『PONのお姉さん』、大きなお友達からは『みこPON』の愛称(異名)で親しまれる彼女『巫女乃サクラ』は卯佐美が所属するギルド『ダンライ』の先輩美少女ダンジョン配信者である。


「なんでって、ここがそーいうダンジョンだからなんですけど」


//ウサミン、うちのみこPONがゴメン

//これ表示OFFだから出ないけどPON代(迷惑料)です、お納めください

//今回の被害者はウサミンか


「なんかサクラ先輩のリスナー、25Pからまた詫び入れられてるペコだけど」

「おい、なんでいつもサクラが迷惑かけるぜんてーなんだぉ!」


//みこPONお腹見てみ、枷……ついてんで

//二人とも細いから枷ガバガバなのに何で落ちないんだろ

 

 バニーな軽鎧を纏う卯佐美はもちろん、名が体を表す様に巫女服風の装備を纏うサクラの体型も高い頻度でダンジョン配信をするだけあって余計な贅肉は付いていない。そんな彼女たちと枷との間にはフラフープが出来そうなくらいスキマがあるにも関わらず重厚な枷は地面と平行を保っている。


「見ろ卯佐美! あたしら細いって!! まぁ? サクラはスーパーエリートだから体型維持も完璧なんですけど」

「いやサクラ先輩配信であれだけ動き回ってるラビだから太る方が難しいだけ……って、今日卯佐美はあの運動量に付き合わされるピョン!?」


//言うてウサミンの運動量も変わらない気がするけど

//それを見越してのPON代だった!?


「そうそう卯佐美の運動量も大して変わんない変わんない」

「だってサクラ先輩無駄に動くラビじゃん」

「無駄ってゆーなぁ!」

「はいはい。とっとと上ってくピョン」


 撮影用ドローンが画角を上に向けて二人のいるダンジョン『クサリの伝説』の様子を配信画面に映し出すと岩や柱、水車に巨大タンバリンと統一性の無い物体達が空中に固定された(一部は動いてる)異様な光景が映し出された。


//天辺見えねぇ……

//たしかここって落下ダメージ無効な代わりにチェックポイントに到達するまで脱出できなかったよね

//ウサミン達、今日帰れる?


「卯佐美だけなら余裕で帰れるペコなんだけどな~」

「あに見てんだぉ」

「え? そういえばコラボ相手の紹介してないラビだなっと。サクラ先輩だし別にいっか」

「よくないんですけど!? アイドルダンジョン配信者ギルド『ダンライ』の零期生! スーパーエリート冒険者の巫女乃サクラでーす。よろしくにぇ――?!」


 挨拶の途中で鎖に引っ張られ宙へ浮かぶサクラ。ドローンが鎖の先を捉えると卯佐美がスイスイと浮かぶ岩塊群を飛び跳ねて進んでいるのが映る。


//ウサミン、みこPON引き摺って……はないか岩にぶつかってるけど

//ピンボールみたいで草

//がんばって


「おい! 勝手に進むな、せめて一言言ってから上れ」

「サクラ先輩防御力高いし、この方法が一番早く上れるウサ」

「ヒトの心はねえのかお前は!」


//みこPONの服が少し汚れただけで本人に傷一つない……

//途中から受け身取ってて茶葉だった

//う、ウサミンにもヒトの心ぐらいあるってきっと……たぶん恐らくmaybe


「サクラの配信は小っちゃい子も見てんだぞ!」

「えっと良い子の皆は真似しちゃダメぺこだよ?」


 サクラのリスナー『25P』の年齢層は幅広く、低年齢層は『25p』と呼ばれたりもする。そのことを思い出した卯佐美は声を作り、今のは悪い見本だったという体にするよう配信の修正を図った。


//はーい

//無理があるってwww

//ウサミンって可愛い声だせるんだ


「は? 卯佐美はいつだって可愛いラビだろ」

「圧かけんなって」


 本気では怒っていない卯佐美をサクラが宥め、二人は気を取り直してダンジョンに浮かぶ足場を上っていく。時にサクラが足を滑らせ、時にサクラが崩れる足場を踏み抜き、時にサクラが飛び出す壁に弾き飛ばされ、時に二人でタンバリンしたり、時にサクラが水車に足を取られ、時にサクラが………………とにかく二人は力を合わせて? ダンジョンを上り進めた。


「ここが最初のチェックポイントぴょん? めっちゃ時間かかったウサ」

「うおーやべー自己ベストかもしんにぇ」

 

//すごいうさみんさん

//ぽんのおねえさんおめでとう

//うちの子もウサミンさんを賞賛してます

//お疲れウサミン、でもこのダンジョンはここからだよ


 チェックポイントへ到達するためには試練を突破する必要がある。二人はまだその入り口の前に立っただけに過ぎない。


 その試練は――


「サクラ先輩、これ分かるペコ?」

「ふふん。このスーパーエリート冒険者の巫女乃サクラに任せんしゃい」




「まだ?」

「分がった! ……いや待ってやっぱ分がんない、あっでも分がった?」


 ――謎解きであった。


  モノリスに刻まれた問題文を読み解き、正しい順番でスイッチを踏むだけの簡単な仕掛け。件の問題に至ってもそう難しいモノでもない。


//かんたんだよ~

//答えいる?


「「ここでリスナーに答えを聞くのは負けなきがする」ピョン」


//お、おう

//難しく考えなくていいから

//最悪総当たりで踏めばなんとかなる


「分がった!」

「あ、ちょ――間違った順で踏むと……」

 

 サクラが勢いよく不正解の手順で踏むと罠が起動し、灼熱の炎がサクラを襲う。


「あっちゅ!? あっちゅあっちゅ、あぁぁっっちゅい!」


//焦げ目付いてる

//ウサミン炎を引き裂いてなかった?

//当然の様にみこPONは無傷なんですけどね

//出た! みこPONのリアクション芸


「じゃあ次は、これ!」


 落雷。


「こっち!」


 大寒波。


「これでどうだ!」


 宝箱が現れた。


//なんで宝箱!?

//新情報きてぃあ

//だれか今の順番メモしたか……ってアーカイブ見直せばいいか


「卯佐美、開けていい?」

「そりゃサクラ先輩が出したんだし開ければいいピョン」


 興奮が隠し切れない様子で目を輝かせたサクラは宝箱へと近づき手を掛ける。


//罠とか警戒しないの?

//何が出るかな何が出るかな

//ごまだれ~


「てってれ~『正解の順番』って紙きれかよ、舐めてんのかって」

「まさかの救済措置ペコ!?」

「あ~確実に舐められてますわーダンジョンから」


 そう言いつつもサクラはメモの通りにスイッチを踏み、次の試練へ。


//なにかいる!

//大砲サソリか、尻尾の先から飛ばしてくる砲弾に気を付けて


「よし、サクラが攻撃を受け止めるから――」

「え?」

「――え?」

「もう終わったラビだけど」


 次の試練として待ち構えていたモンスターの首が落ちる。


//恐ろしく速い首狩り、俺でなくても見逃しちゃうね

//いつのまに


「もうちょっと先輩の見せ場作るとかさ~」

「え~じゃ、次のボス戦は先輩でトドメ刺しますペコ」

「よっしゃ! ……ん?」


 攻撃は最大の防御という言葉があるのなら防御が最大の攻撃となるだろうか。答えはあるかどうか分からない。だがしかし、確実に一つ言える事はある。


//ボスって要塞タートルか硬いんだよなアイツ

//がんばれ~


硬いヤツ防御力が高いの硬いヤツ防御力が高いのがぶつかったら当然硬い方が勝つウサ!」

「ねぇちょっと待って! 待ってって卯佐美――……」

「喰らえ! みこPONハンマー!!」

 

//コンビ技だー!

//なるほどみこPONの高い防御力で敵の防御を打ち砕くわけか

//すごーい


 サクラの見せ場(物理)によりボスモンスターが光の塵となって消えた事で転移用の魔方陣が床に浮かび上がった。


「チェックポイントだピョン」

「ひでーめにあったぞ」

「キリが良いしここまでにしとくペコ?」

「そうする。卯佐美とだと命が幾つあっても足んねぇし」

「またまた~卯佐美の首狩りが効かないサクラ先輩なら命は幾つもいらねぇラビでしょうに」

「おまっ!? あれ、痛みはそんなねぇけど首締まっからな?」


「はい、キリがいいので本日の配信はここまでペコ。本作品この配信を気に入ってくれたなら作品のフォローチャンネル登録レビュー高評価してしてくれると嬉しいピョン。乙PONラビ~」

「乙ぽ――ってPONはやめろ!」


//おつPON

//おつラビ~

//おつPONラビ~


――本日の配信は終了しました――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る