鮫も逃げ出す色白美少女ダンジョン配信者と軍服豊乳美女ダンジョン配信者

「サメの首ってどこピョン」


 海面から飛び出し宙返りサマーソルトを決めたサメの首……がどこか分からんなくて仕方なくエラの付け根辺りで両断した卯佐美が疑問を口にすると返って来る声が一つ。


「卯佐美~? 魚に首があるかなんて知ってるリスナーがいるわけ無いでしょ」


//どっかの大学の研究によると首の骨が一つあるとかないとか

//あれ、誰かいる

//海だからどうするのかと思ったらコラボか


「って、いたぁぁぁ!?」


 大海原に浮かぶ鋼の船上にて騒ぐ二人の人影が引きの画角で撮っていたドローンのカメラに映り、その姿が配信画面へ。


「あ、コラボ相手の紹介を忘れてたラビ」

「え!? ちょっ、ふつう忘れる?!」

「もう映ってるぺこよ?」

「はいぃぃぃ!? ……おほん。敬礼~ギルド『ダンライ』所属、三期生『砲主ほうぬしマリーネ』ですぅ~」


//艦長だ

//ばるんばるんしよる


 素早い変わり身で何事も無かった様に挨拶をする軍服風の装備を纏う美女の名は以下略、卯佐美の同期である。


「うぉい! 略すな」

「な、なんの話ピョン?」

「分かってんだよ卯佐美。あんたが私の紹介をサラッと流す気でいる事はなぁ」

「なぜバレたペコ」

「これが同期の絆ってやつよ」


//ウサミンって友達いたんだ

//同期の絆って便利だな~

//三期生と三期団で同期なの?


「言い方が違うだけで同じ三期で同期のマリーネとコラボしてこのダンジョンを進んで行くラビ」

「三期生の方がアイドルっぽいじゃないの。今日の艦長はアッシーなんで基本的に戦闘は卯佐美がやりまーす」


//アッシー? ってなんだ……

//そうかこの船、艦長のテイムモンスターか


 二人が乗る船は旧日本海軍が誇る最速の駆逐艦・島風……の付喪神。マリーネが艦長と名乗る所以となるテイムモンスター達の一隻である。


「ところでいいの? 卯佐美」

「何がペコか?」

「ここドロップアイテム化するまで残骸が残る仕様だけど」


 駆逐艦を浮かべても問題にならないほどの海が広がるダンジョン『大シャーク物語』はサメ系モンスターしか出現しない。そう、サメ系しか。


//船の周りが真っ赤だ

//でーでんでーでん


「それを早く言うペコ!」


 卯佐美が叫ぶのと同時に飛び上がってきた二頭を持つサメツーヘッドシャークを卯佐美が首と思う場所で両断し、血の雨が降る。そしてより濃くなった血の匂いに誘われて海面に浮かぶ背ビレの数が増した。


//数やべぇ

//何匹いるんだ……


「あ~らら~こんだけ近いとぜかっちゃんの主砲が向けらんないわ」

「付喪艦の中で一番小さいっても100はあるウサだしな。面倒だし轢いて倒せねぇぺこ?」

「はぁ? 卯佐美、あんたが倒すって約束でしょ……何食ってんのよ」

「サマーソルトシャークがドロップしたかまぼこウサだけど、マリーネも食べる?」

「あ、思ったよりもふわふわで美味し~――じゃないっ!」


//たしかに思った以上にかまぼこだった

//あの板はどっから来たんだろ

//あ、また飛んできた


 仲間の成れの果て? に舌鼓を打つ二人に業を煮やしてか海から勢いよく飛び出して来たサメは頭ではなく尾ビレが二つあった。


「これはツインテールシャークでいいラビかな」

「髪の毛みたいなのも付いてるわね」


//もしかしてここって普通のサメって出ない?

//擬人化して出直して来い


 頭の無い尾びれが二つのサメツインテールシャークが海に落ちるのと入れ替わるようにして頭が二つだったサメの残骸が光の塵へと変わり、卯佐美とマリーネのいる甲板に新しいかまぼこが現れる。


「倒した残骸が海に落ちてもドロップアイテムは甲板に出るってんなら話は別ピョン」

「ちょっと調理室から調味料取って来るわ」


 指の骨を鳴らした卯佐美が甲板の縁に寄って海面を見下ろすのに合わせ配信画面では逆光で目を赤く光らせた卯佐美のカットインが映り、その口元が三日月形に裂ける演出が入った。


//怖っ!?

//サメさん逃げてー……って、もう手遅れか

//この後、スタッフが美味しくいただきました


 噴水の様に立ち並ぶ水柱が上がり、海面には頭の無いサメっぽい何かがだったモノが次々と力なく浮かび上がる。


 死屍累々。


 溢れるサメらしきモノの血が新たなる獲物を呼び、惨状の一部に加わるのが幾度となく繰り返される。


//海が真っ赤に染まった……新世紀?

//あの紅い海って使徒を倒したからだっけ、ウサミンならやりかねん

//グロ映像処理ONなせいでウサミン達が乗ってる船、モザイクの海に浮かんでるんだけどwww


 死亡判定とも称される光の塵化によりサメらしきモノの屍が消えて深紅に染まった海が輝く幻想的な光景も新しく増える屍の映像処理によるモザイクで台無しになっている事に終ぞ気付かれる事は訪れなかった。


「炙って七味マヨで食うのもイケるラビな」

「おい、それ艦長が育ててたかまぼこ!」


 なお、気付けそうな二人はマリーネが調理室から持ってきた七輪でかまぼこパーティを開催して海に視線すら向けていないので気付くはずもない。


//腹減ってきた

//後でかまぼこ買ってくるかな


「一応リスナーへのプレゼント用でもあるから食べ過ぎるなペコよ」

「いや卯佐美、食べきれないってこの量は。なんなら既にちょっと飽きてきたし」


//やったぜ

//今回はどの語尾で来るんだろうか……

//ん? なんか暗くなってねぇか


 甲板に山積みの個包装されたかまぼこを卯佐美のアイテムボックスへ二人して放り込んでいると巨大な影が付喪神な駆逐艦ごと覆いつくした。


「ついに空を飛ぶのが出てきたピョン」

鮫空母艦こうくうぼかんエアシャークキャリアーだって卯佐美」

「上にいられると落とした時に下敷きになるペコだから艦長、船出してウサ」

「ぜかっちゃん! 微速前進ヨーソロー」


//母艦だけあってわらわら出てきた

//なんでサメが空を……ってサメだしな、さもありなん

//待って!? あのサメ達、最初から首が無い!


 エアシャークキャリアーから飛び立つ無数の頭の無いサメ。


「首どころか頭すらねぇラビなんだけど」

「ん~デュラシャーク・エアリアルって名前だから母艦の方に置いて来てるんじゃない?」


 垣間見えるダンジョン側の抵抗――否、全力の抵抗は船尾の方角に画角を向ければありありと配信画面に映った。


//なんじゃありゃ

//シャークネー……げふんげふん、サメ竜巻きてぃあ!

//あるいみB級ダンジョンだな


 天を突くほどの巨大な竜巻は気流によって生じたモノではない。数多の空飛ぶサメが螺旋を描く大魚群。卯佐美のテイムモンスターだった『群体バッファロー』と同じ群体型モンスター『竜巻魚群シャークリーチ』が卯佐美達を呑み込もうとして――


「全速前進YO!」


 ――追い付けなかった。


//船が出していい速度じゃねぇwww

//速過ぎて途中滑空してたぞ

//母艦も気付いたら落ちてた


「ぜかっちゃん! 艦艇ドリフト!!」


 マリーネの号令で横滑りしながら進み、付喪艦・島風ぜかっちゃんはシャークリーチの方へ船首を向ける。


//艦艇ドリフト!?

//なるほど艦長もウサミンと同類なんですね、よく分かりました

//今、サラッと艦長のカットインが入った!


「卯佐美、やれる?」

「あの数……首の狩り甲斐があるウサ」

「おバカ! サメの竜巻には爆撃でしょ!?」

「あ、じゃあ四天王行く為に巡ったジムでドロップしたテイムモンスター用の餌余ってるから全部やるペコ」


 卯佐美の言葉を聞いた瞬間、目の色が変わるマリーネ。


「いにしえの國の名を冠すモノ、國を彩りし大地の名を冠しモノ……」

「毎回思うペコなんだけど、こんな長い詠唱いるウサ?」

「我が号令に応え、我らが威を示せ」

「あ、省略した」

多重限定召喚ゲート・オブ・アーマメント


 マリーネの背後へ翼の様に多重展開された大量の魔方陣から魔術的な幾何学模様が刻まれた砲身と魚雷発射管が飛び出し、極彩色の光を纏う。


全砲雷斉射フルバーストォォォ!!」


 そして、卯佐美には無い胸を揺らし片手を突き出す演出が入ったマリーネのカットインと共に常軌を逸した超火力が解き放たれた。


//カットインが動いた!?

//………………(声が出ねぇ)

//竜巻どころか海ごと吹っ飛んだんですが


「なんかダンジョンクリアした事になってるから今日はここまでにするペコかな。艦長、数字はどうする?」

「っは~気持ちよかった。 え、数字? じゃあ三期生の3で」

「はい。というわけでプレゼントの応募はいつものハッシュタグに今日三番目に多かった語尾で投稿してくれラビ。そんじゃ本作品この配信を気に入ってくれたなら作品のフォローチャンネル登録レビュー高評価してしてくれると嬉しいピョン。乙ウサリーネ~」

「乙ウサリーネ~」


//おつウサ~

//おつリーネ~

//乙ウサリーネ~


――本日の配信は終了しました――

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