ex 外野から見た私達について 下

「今どんな感じって……私が女だっていう事を明人に伝えてから一時間も経ってないんだけど……」


「それでも私達が本当の意味でこれまで通りとなっていないように、何か変化は有ったんじゃ無いですか? 例えば……向けられる視線の一つや二つ位は変わったんじゃないですか?」


「え……うん、まあそうだね」


 自分も鈍感であるつもりは無いから。

 少なくとも明人に対しては鈍感でいるつもりは無いから、分かってる。


「ちゃんと女の子として見て貰えている事は分かったし……まあ、そういう視線を向けられてもいるなってのも分かった」


 そういう視線。

 例えば好きでもない人に向けられたのであれば、あまり気分の良い物では無いのかもしれないけれど、明人になら別にいい。

 そういう視線。


「なら脈ありじゃないですか。良かったですね。こういうのって今までずっと親友的な意味で距離感近かったから、いざ女ってカミングアウトしても関係性が変わらないってのも有りそうですし」


「脈あり……か。どうだろうね」


「……?」


 実を言うと正直その辺に自信は無い。


「私ずっと男に混ざって色々雑談とかしてきた訳じゃん。だったら分かる訳だよ。思春期の男子ってこう……頭の中がこう……煩悩というか、エッチな事しか詰まって無いんだよ」


「それはちょっと言い過ぎな気もしますが……」


「そんな事ないよ。明人だってそうだし。ほら、マコっちゃんだって……」


「康太はそんな全身エッチ人間みたいな人じゃないです」


 ……鋭い目線と声音でそう言われた。

 あと流石にマコっちゃんがそんなとんでもない事になっている想定はこっちもしていない。


「ご、ごめん。エッチな事しか詰まってないは言い過ぎた……ていうか明人もそんなんじゃないし……」


 少なくとも全身エッチ人間ではない。

 なんだ全身エッチ人間って。


「まあどうであれ、適度にって感じでしょう。それがどうかしました?」


「いや、例えば男子がエッチな本とか見てうおおおおおおおおってなってたとしても、それは別にそれに対して興奮してるってだけで、別にその人の事を好きって訳じゃ無いじゃん」


「まあ……そうですね。多分」


「それと同じだよ」


 そう、同じ。


「私の事をそういう見てくれても、それが私だからかどうかは分からない」


 自分の事を恋人にしたいだとか、そういう意味で脈があるのかどうかは分からない。


「……お二人の距離感を見た感じ、全然行けると思うんですけどね」


「ま、私達は親友だから。それは変わって無いし……端から見ても、私から見ても男女の距離感ってのが図りにくくなってるんだよ」


「……」


「……明人からは、なんとも思われていないかもしれない」


 だからこそ。


「だからこそ慎重にならないと。勢い余って攻め過ぎたら……なんか今の関係も壊れちゃうかもしれないし」


 少なくとも、今朝いきなりやった事みたいなのは絶対に駄目だ。

 下手すると痴女だと思われる。

 これから、無い脈をゆっくり繋いでいくようなつもりでいかないと……。


(……あれ? 現在進行形で思われて無いよね……んん!?)


「……元から距離が近すぎるってのも問題ですね。前途多難です」


 隣で橋本が面倒くさそうに小さく溜息を吐いた時だった。


 二人が戻ってきたのは。



──────────


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