14 前途多難、二人

 トイレから戻り二人と合流した。

 当然と言えば当然の事なんだけど、離れた所から見る限り渚と橋本の二人は何かを話していたみたいだ。

 女子同士での会話となれば、渚の振る舞いも全然違うのだろうか?

 そんな事を考えながら二人に声を掛ける。


「悪い待たせた。何話してたんだ?」


「前途多難だなぁって話をしていました」


「前途多難……まあ渚の場合これから色々大変だろうしな」


「奇遇だな。こっちも前途多難って話してたんだ」


「いや俺達の方は渚達の方と中身違うだろ」


「んん~? 何が前途多難なのかな男子二人は」


「別に俺の道は快晴なんで関係ねえなぁ。前途多難なのは約一名」


「ほほう、じゃあ明人か。どれどれ、私もこれから愚痴とか一杯聞いてもらうかもしれないし、相談なら遠慮なく受け付けるよ」


「いやいやいや、これはお前に相談するような話じゃねえから」


「ふーん、怪しいなぁ……まあマジで困った事になったらその時は遠慮なく相談してよ。色々有ったけど私と明人の仲じゃん」


「……まあ、そうだな。頼むぜ親友」


「任せろ親友」


 まあ俺の場合、その親友が最悪親友ですらなくなってしまうかもしれないから、渚に相談とかできない訳だけど。

 ……でも、ひとまず俺達はまだ親友だ。


 だからこその距離感だ、勘違いすんなよほんと。


「……」


「……」


 と、そんなやり取りをしている間にマコっちゃんと橋本の二人が黙ってアイコンタクトを送り合っているのが見えた。

 そしてやがて二人で口を揃えて呟く。


「「……前途多難二人、か」」


 いやいや、俺のと渚の纏めるのは違うでしょうよ。

 全然方向性違うんだから。



 とはいえ……もし二人の言う前途多難の意味合いが同じなのだとすれば、それはとても良い事だなとは思うけれど。

 マコっちゃんのおかげで、親友の渚に対してそういう感情を抱く事への罪悪感みたいなのは薄れた訳だし、それは本当にそう思う。


 ……そもそもの話。

 渚ならそういう方向性の事で前途多難だなんて言われる事は無いと思う。

 多分だけどもっと分かりやすい言動をぶつけて来るのではないだろうか。



 いきなり女の格好で現れる事が出来た渚なら、多分俺のように足踏みをしたりしないと思う。



 そして今朝のアレは事故だとして……その後も、俺が親友特有の距離感だろうと推測しているような言動をしていた訳だから。


 まあきっと、そういう事なんじゃないかなとは思う訳だ。



 ……もしも親友以上の関係を望むなら。

 きっと現状ただの親友でしかない状態から、一つ一つ積み上げていかないといかない。


 ……それができるなら、中学時代に彼女出来ていてもおかしくないと思うんだけど。


 ……というかもうこんな事お考える辺り、本気でそれを望んでいるんだな俺自身が。

 渚とそういう関係になる事を。


 ……前途多難だよ本当に。

 ……たかだか一時間程度で此処まで自分の心が滅茶苦茶になるとは思わなかった。

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