第60話 決闘の練習⑤

 フウドと向かい合いながらサクは杖を構える。


「本当にいいの?」


「もうここまできて遠慮するなよ!」


 決心が揺らぐから。


 フウドがサクに向けて杖という名の大砲を向ける。それだけで体の毛が縮こまるのを感じた。


「【インパクティア】!」


 フウドが呪文を唱える。すると、先程のように大きな大砲の魔弾がサクの方へと飛んでくる。


「……っ」


 サクは半分腰を抜かしながら飛んでくる魔弾に杖を向ける。幸い、大きい分フウドの魔弾もまた遅い。これなら杖で防ぎ損なうこともないだろう。


 どこかほっとしつつ、サクは自身の黒い杖をフウドの魔弾に当てる。


 バチィィィン!


 その瞬間。サクの身体が吹っ飛ばされる。


 魔法は確かに弾き、霧散した。だが、弾いた衝撃でサクの身体が空中を舞う。


 綺麗なまでの空中3回転。体操競技なら見事な満点か。


 あぁ……余計なことをするんじゃなかった……。


 吹き飛ばされた浮遊感を感じながらサクはそんなことを思う。


 慣れない同情なんて、するんじゃなかった。慣れないことをするからこんな目に……。


 そこまで思考が回ったところで、サクの体は重力に引かれ、頭から地面に激突。


 どこか遠くの方で「サク君!?サクくーーん!!」とフウドの悲しげな声が聞こえた気がしつつ、サクは白目を向いて意識を失った。

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