第57話 決闘の練習②

 春の陽気は更に強い日差しへと変わり、夏が近づいてくるのが身に沁みて分かる。


 梅雨ど真ん中で3日ぶりに晴れた桔梗院では6月に迎えるイベントの準備が始まっていた。


「魔法大会?」


「そう。魔法の技をいろんな種目で競うんだよ」


 グラウンドに向かいながらサクは晴輝から説明された。


 魔法大会とは、サクのいた世界で言う運動会のようなものらしい。


 魔法に関する競技をクラス対抗で行い競い合いクラスの優劣をつけるそうだ。


 桔梗院の1年は4クラス。小学校のころと比べるとなかなか豪華に感じられた。


 しかも、6年に一度外部の魔法学校と合同で行う大規模な大会が催されることもあるそうでそれはもう大きな祭りのようなイベントになるらしい。


 ちなみにそれはサク達が高校1年になる時の話だ。


「サクは何に出るの?」


「決闘一択。他にできそうなものが無いし」


 紫藤先生から渡された競技一覧には様々な物が書かれているがいかんせんどれもやったことがない。専門性の高い競技はちんぷんかんぷんだ。


 決闘なら魔法の撃ち合いをするだけ。専門的な知識もいらなければ特別な練習だっていらない種目なのだ。


「へえ、意外。僕は魔法演芸に出場するんだ」


 魔法演芸……。確か魔法を使って演技を行いその美しさや技術の高さを競う種目だったはず。


 日本魔法学で陰陽術はただ行使するだけじゃなく、人に魅せる技も数多くあると習った。そしてそれを見せ合う術比べという習慣があったそうな。


 一番有名なそれはかつての安倍晴明と蘆屋道満の決闘だとかなんだとか。


 日本魔法はそうやってどこか優雅なイメージがサクにはあった。


 まだまだ不慣れなサクには到底なせる技じゃない。ある程度魔法に慣れ親しんだものしかできない競技というわけだ。


「それじゃ、お互い検討を祈るよ」


「お前もがんばれよ、晴輝」


 そういってサクと晴輝は別れ、魔法大会に向けた準備のためにグラウンドへ向かうのだった。

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