第40話 浮遊魔法⑨
あくる日。1年1組の教室に高らかな笑い声が響き渡っていた。
「はーっはっはっは!よくぞこの桔梗院へとやってきた!少年少女よ!!」
そう元気な声を張り上げるのは西洋魔法学を担当するアレックス先生。長く腰まで伸びた金色の髪と青い瞳が特徴的な若い男の先生だ。
「この授業では西洋魔法学の仕組みや実際の魔法の習得を目指すわけだが……残念なことに、まだ君ら1年生に崇高な西洋魔法の奥義を教えることは許されていない!実に嘆かわしいことだ!」
一挙手一投足が大げさで見ているだけでうるさい先生だと思う。デュラハンのジェシカは一見ニコニコと話を聞いている様に見えるが、頭を抱えながらさりげなく耳を塞いでるのが見えた。
「先生!質問いいですか!?」
するとドワーフの血を引く明智が勢いよく手を挙げながら声を上げる。アレックス先生にも負けずとも劣らない声の大きさだった。
「西洋魔法と日本魔法って何が違うんですか!?俺、日本の魔法しか知らねえからあんま分かんなくて」
「ほほう!実によい質問だ!」
杖で肩をとんとんと叩きながらアレックス先生は黒板に何かを書き始めた。
「いいか?日本魔法と西洋魔法の大きな違い、それは……魔法を道具とするか否かだ。西洋魔法は魔法を『使う』という認識が強い。剣や槍のようにな」
アレックス先生が描いているのはどうやら絵のようで棒人間が杖の先から何やら光を放つ絵。かなり下手くそだと思った。
「一方の日本魔法は……なんと形容するのがよいだろうな」
「……といいますと?」
「日本は独特な文化があるからな。空気を読むとか、諸行無常とか……いわば感覚だ。魔法も使うというよりもそのような直観性や感覚を重んじる。西洋人にはなかなか理解が難しいものなのだ」
逆はそうでもないようだが、とアレックス先生は付け加える。
「ふ、まあそれもいずれ習うことになる!君らには無限の可能性と明るい未来が待っているのだ!さあ精進したまえよ?ここで学んだことが君らの魔法習得への道となるのだから!さあ教科書を開きたまえ!」
そう言ってアレックス先生の授業は始まる。だが、サクの心は浮かなかった。
無限の可能性と明るい未来。それはサクがあやめ先生の試験をクリアできればの話。
今、それらが閉ざされかかっているサクには耳が痛い話だった。
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