第37話 浮遊魔法⑥

 結局、あの後日が暮れるまで練習してみたが一度も魔法が顕現する事はなかった。


 自室の湯船に浸かりながら湯気に混じったため息をこぼす。本当は大浴場で風呂に入りたかったのだが1人でぼーっと考えたかったこと。そして何故かサクの部屋から出たがらないクラのためにサクはこうして自室で風呂に入っている。


 紫藤先生に告げられた期限はあと4日。それまでに魔法をできる様にしなければならない。


「参ったなぁ……」


 湯船に浮かんで気持ちよさそうに目を細めるクラを眺めつつ、今日のことを思い返す。


 ここまで来たら恥も外聞も投げ捨てて先生に聞いて回るべきだろうか。いや、でもそれで本格的に魔法が使えない認定されてしまうのも困る。あまり多くの先生に知られたくはない。


 それに空希さんならきっと他の先生に漏らすこともないだろう。


 じゃあ、アゲハさんにコツでも聞いてみるか。


 アゲハさんなら確かに親身になって色々と相談に乗ってくれたり魔法の練習にも付き合ってくれるだろう。


 だが、変な気を遣われるは嫌だ。ここは今サクの家なのだから顔を合わせるたびにアゲハさんから「魔法はどうですか?」とか聞かれるのはたまった物じゃない。


 せめて桜の園にいる間は心労なく過ごしたいのだ。


 プカプカ浮かぶクラを軽く指で小突く。


 クラはバランスを崩したようにクルクル湯船の上を回転した。


「キッキー!」


「あはは、悪い悪い」


 クラが沈まないように受け止めると怒ったようにクラが鳴いた。


 そんなクラの頭を撫でながらサクは湯船からあがるのだった。

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