第30話 クラスメイト②
自己紹介を終えたサクは机に突っ伏していた。
「さ…サク……だ、だい……じょぶ?」
目に涙を溜めながら笑いを堪える晴輝。
そんな晴輝に怒りも起こらないぐらいにサクの心は羞恥に揺れていた。
盛大に、噛んだ。大きな声で、堂々と。
せめて、笑ってくれればいいものを。クラスの皆は全員顔を下に向け必死に笑いを堪えていた。
その状況がまたサクの羞恥心を抉っていた。
紫藤先生ですらしばし教室の外へと顔を向けながら肩を震わせているのが見える。
いっそ、殺してくれとまで思った。
サクが作り出した空気の中、いたたまれない顔をした青い髪の女子が教壇に上がる。
「め、メイ・ドロアーでございます。ライリー・レオ・メイガス様の付き人をしております。以後お見知りおきを」
金色の目をした彼女は丁寧な口調で頭を下げる。そのおじぎも洗練されたような清廉さを感じさせる。
それだけで彼女が仕えるライリーの家の高貴さが分かるような気がした。
その次は凪。
「女木島凪。みんなよろー」
淡々と、彼女らしく自己紹介を終える。何も変わらない凪の様子を見て、ようやくサクの頬の熱も冷めてきた。
凪の次に呼ばれた男子は黒髪の切るのを忘れたのかボサボサに伸びた黒髪をしている。
「や、薬仙寺…錠……。薬の調合が好き。よろしく」
何とか聞き取れるかどうかといった声で錠はそそくさと自分の席へと逃げ帰っていった。
「さぁ、最後だ。リアム、出てこい」
「ま、待ってください先生!私の番は……」
「お前はさっきやっただろう?時間の無駄だ」
「そんな!?横暴です!」
「黙れ。呪うのなら自分の行動を呪うんだな」
「ぐ……ぬぬぬぬぬ……」
紫藤先生の容赦ない態度にライリーは歯を噛み締めながら俯く。付き人のメイが必死にそんなライリーを慰めていた。
紫藤先生はどうやら立場とか地位とか。そんなものにへりくだるようなタイプではないらしい。
自分をしっかり持っているというか、隙がないというか。かっこいい大人の女性、強い人間だと思った。
そんなライリーを飛ばした最後のクラスメイト。サクの隣人。
「リアム・シモンだ。狼の獣人。よろしく頼むぜ」
てっきりまた何かに噛み付くかと思ったが至って普通にリアムは自己紹介を終えてみせた。
出会い方が悪かっただけで、本当はああいう普通のやつなのかもしれない。
これがサクのクラスメイト全員。少なくとも中等部の間はこのメンバーでやっていくことになる。
不安と期待を混じり合わせながら、紫藤先生が読み上げる今後の予定とか話に耳を傾けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます