第24話 入学式①

 薄暗い部屋に朝日が差し込む。


 肌寒かった季節は終わりを告げ、春を告げる暖かな風が開けたままの窓から頬を撫でた。


 カチカチと時間を刻む時計を見上げる小さな丸い影。時刻は午前6時59分を指している。


 丸い体をゆらゆらと揺らすたび頭の桜の枝もまた揺れてカラカラと転がる。


 そんなことをしていると、時計の長針がまたひとつ時を刻んだ。


「キッ」


 それを確認した丸い影こと宗方クラはビョンっと飛び上がってサクの布団に乗る。


「キッ、キッキー」


 そして何度も何度も布団の上で飛び跳ねながらご機嫌よく鳴いた。


「い、痛い痛い……!お、起きた……起きたから!ほら!」


 布団の中から降参したように両手を上げる小学生……いや、違う。今日から中学生。


「うぅ……いい天気だな」


 彼はのそのそと布団を這い出してカーテンを開く。


 そこには一面に広がる満開の桜と、春風に揺れる草木たち。


「キッ」


 窓の外を眺めていると肩にクラが飛び乗る。相変わらず軽くて表情の読めないことこの上ない。


 だが、式神の契約を交わして以来は暴れたり危害を加えてくることはなくこうして懐いているような素振りを見せるようになった。


 今となってはこうしてサクの目覚まし代わりになっている。


「いよいよ、今日から学校か」


 肩に乗った式神にそんなことをぼやくサク。


 そう、今日この日。4月8日は宗方サクの入学式だ。

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