第22話 付喪神③

 杖を失えば、魔法使いとしての資格を失うことと同義。杖をもらった時にトウカから簡単な説明をしてもらった。


「杖は魔法使いとしての証。あなたの半身でございます。それを失うことは即ち魔法使いとしての死を意味するのです」


「でも、新しく作り直せばいいんじゃ?」


「とんでもございません。それは無理な相談でございます」


 サクの疑問にトウカは驚きの声を上げる。


「杖を作り上げる時、貴方様の心を二分するのです。その内1つは今も貴方様の心に残りますが、もう半身を杖の中に込めます」


 ようは、杖の中に自分の心の半分を閉じ込めることで魔法を行使できるようになるらしい。だからサクの杖を他の人が使うことはできないし逆にサクの杖を他の人が使うことはできない。


 それが魔法の杖のメカニズムということなのだそうだ。


「そして、その儀式は基本的に生来一度しか行うことができないのです」


「え、どうして?」


 魂を二分にするのならまた同じことをすれば同じように杖が作れるのではないかと思ってしまう。


「簡潔に申し上げれば杖を形成するに足る力が及ばないからです。この儀式を行えば貴方の心は半分になります。杖を失えば杖に譲渡した心の半分は永久に失われることとなります。もし万が一2度同じ儀式を行えば力が足りず魔法を行使することができない杖ができあがり、杖の持ち主は己を保てず廃人と化してしまうのです」


 トウカの説明を聞いて背筋が凍る。うっかり杖を無くせば魔法使いとしてのサクは終わり。杖の再作成なんてものもできない。


「まぁ、全く同じ性質の心を持つ杖があれば魔法が使えないことはありません。何億分の1の確率であり得ない話ですけれど」


「そんな、うっかり無くしたら終わりじゃないですか」


「そうですよ。だから杖は己の一部と思い、決して肌見離さぬように。大切にしておいてくださいまし」


 トウカの言葉を聞いて杖が5倍ぐらい重くなったような気がした……。

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