第16話 隠れ里②

 空希の後を追いかけると、そこはサクが吐瀉物をぶちまけた鳥居の前だった。


 すでに鳥居の中央はグルグルと渦を描きながらサク達のことを出迎えてくれる。


「さぁ、行ってらっしゃい。向こうに着いたらそこで待っててね」


 空希の言葉に誘われるように、皆順番に鳥居の渦の中へと飛び込んでいく。


 早速次の試練か……とサクは初体験の転移鳥居を思い出して喉の奥まで朝食が戻ってきそうになった。


 ここでまた吐くようなことがあっては今度こそ『変人』『変わり者』となってしまう。それだけは何とか避けたい。


 ドロシーの陰に隠れてどうにか避けられたのだ。何としてもここは乗り切りたい。


「ほら、サクくん。君の番だよ」


「ひっ!?」


 精神統一をしていると、ふいにサクの肩に手を置かれる。たまらず変な悲鳴をあげてしまった。慌てて辺りを見回すがもうすでにサクと空希以外のみんなは行ってしまったようだ。


 安堵しつつもトラウマが邪魔をして足を踏み出すことができない。


「君、転移鳥居はそんなに慣れてないんだよね?」


 すると、中々鳥居に飛び込めずにいるサクを見て空希が声をかけてきた。


「い、いや。そんなことは」


「安心して。理事長から話は聞いてるよ。君が盛大にやらかしたことも含めてね」


 取り繕うサクに空希は笑いかけた。


 込み上げてくる数日前の晴影さんの悲しそうな顔と、森の空気にまじる胃酸の香り。


 それを目の前の空希も知っていると思った時、サクは顔に熱を帯びるのを感じた。


「僕も苦手なんだ、これ。感覚が鋭い人は特にそうらしい。だから酔わないコツを教えるよ」


 そう言うと空希さんはサクの背中を軽く押す。


「まず、体はまっすぐ。背中に硬い木の棒を差し込まれたようにイメージして」


「ま、まっすぐ?」


 羞恥を捨てるように空希の言われるがまま背筋を伸ばす。


「そう。バランスを崩さないようにまっすぐ歩くように踏み出す」


 空希さんの言葉に導かれるようにサクは1歩、また1歩と鳥居に近づく。


 辛酸の塊である鳥居を前に恐怖がないと言えば嘘になる。


 もう一度だけ空希さんを振り返る。空希さんはただ黙って頷いてみせた。


 それを見た後は足は止まらなかった。真っ直ぐに渦の中心へ進む。ぐにゃりと自分が、世界が曲がる感覚がサクを襲う。周りの景色は捻じ曲がってサクの後ろに流れていく。


 それだけでサクの胃から朝食べた卵焼きが返って来そうになった。けれど、心にのしかかっていた不安という鉛が軽くなっていることに気がついた。


 周りの景色が前から後ろへと飛ぶように流れていくのをどこか冷静に感じられる自分がいる。


 左右に揺さぶられる感覚がサクの脳を襲いすぐに気分が悪い。


 『真っ直ぐに立つ』『前に歩くイメージで』。


 破壊されそうなサクの脳に蘇るのは空希さんの言葉。そうだ、落ち着け。真っ直ぐに体を保つんだ。


 視界が波打つが構わずサクは足を踏み出す。足が何か硬いものを踏んだ。地面だ。


 その瞬間。渦の中心を起点に一気に景色が晴れる。


 そして爽やかな風がサクの身体を吹き抜け、先程までの不快感が取り払われた。


「ここは……」


 開いた視界に広がるのはとある街の風景。


 サクの立つその場所は右から左へと上がる階段の傍の鳥居の下に立っていた。


 地面はサクのよく知るアスファルトのそれとは違って妙にゴツゴツしている。大きな岩を運んで削り階段にしたのだろうか。


 周りの建物はみな木造建築。かなり古い様式のようで、それが坂道の下から上まで並ぶ。


 初めて訪れた場所だが、サクはこの場所を知っていた。社会の教科書で見たことがある景色だったから。


「わぁ〜……すっごいねぇ。ここが本物の京都の街かぁ」


 先に辿り着いていた沙羅が辺りを見渡しながら抑えられない喜びを口にしていた。


 彼女のいう通りここは京都の街。それも清水寺へと続く坂道の途中だった。


 サクの背後でブォンと音が鳴る。振り返ると鳥居の渦から空希さんが現れる所だった。


「やぁ、みんないるね?じゃあ行こうか」


 京都の清水の舞台に関心を奪われつつ頷くサク達を連れて空希さんは坂道を登る。


 清水寺へと続くこの坂道は確か清水坂と呼ばれており、溢れるほどの観光客で賑わっている。


 日本はもちろん外国の人まで幅広く、どこかで貸出でも行っているのか着物を着ている人達までいた。そんな人々やあたりの景色を興味深そうに他の桜の園メンバーは眺めている。


「あの……空希さん」


 その隙に迷いなく歩みを進める空希さんに近づいてサクは耳打ちする。


「何で京都……それもこんな観光地なんですか?」


 魔法の学校の道具を買いに来たと言っていた。てっきりもっと人気のない山奥の村にでも連れて行かれるのかと思っていたのにまさか日本の観光地に送られるとは思ってもいなかった。


 沙羅の頭の皿やリアムの尖った耳など、普通の人に見られてしまえば確実に目を引くに決まっている。


「目を引きますって。変な目で見られますよ」


「それは大丈夫。ほら、彼らの首元を見てごらん?」


 サクに何とか聞こえるぐらいの大きさで答える空希に従いながらサクは2人に気付かれないように視線を動かす。


 すると2人の首から何やら首飾りのような物がぶら下げられているのが分かった。


「ああいう種族は移人うつろいびとの前に出る時に苦労するからね。ああいった道具で隠してるのさ」


「隠してるって……どういうことです?」


「あの首飾りをしていると移人うつろいびとの目には普通の人間に見えるらしい。ほら、誰も気づいてないでしょ」


 確かに沙羅の頭は彼女自身隠しているから別として、リアムの耳や尾は隠してもいない。しっぽを振って周りの人に当てたりもしているが誰も気に止めてもいなかった。


「すご……」


「そ。ああいう人目を気にする種族の子はあんな道具とか薬とかを使うのが常識だ。よく覚えておくといい。そして今の君の目には彼らの本当の姿が見えているんだよね?」


「え……あ、はい」


「それはつまり、君もれっきとした常人とこしえびと。つまり魔法使いの血を引いている紛れもない証拠だ」


 空希さんの言葉にサクの心臓が跳ねる。そんなサクの顔を見て空希さんは笑った。


「大丈夫、他の子には内緒にしておくよ。他の子に知られたくないんでしょ?君がこれまで魔法とは無縁の生活を送ってきたことを」


「……おっしゃる通りです」


 どうやら、詳しい事情まで空希さんは聞いているらしい。そしてサクの気持ちも汲んでくれている。


 知り合いもなければ魔法の知識もないサクにとって、とても心強く思えた。


 しばらく歩き進めると、階段が終わり清水寺へと続く坂道の前までやってきた。


「さあ、こっち」


 すると、空希さんはその坂道ではなくその手前の方で曲がる。そこは草木が生い茂る行き止まりになっているところだった。


 そして空希さんは何の躊躇いもなく草木の中へと飛び込んでいく。何をやっているのかとサクは口を挟みたくなったが何も言えなかった。


 空希さんが茂みにまさに触れるその瞬間。生い茂る植物達が一斉にざわめき立つ。彼の身体を避けるようにその身を曲げ、道を作り出したではないか。


「ほら、早くついておいで」


 二の足を踏むサクに向けて空希さんが振り返って告げる。


 見るからに怪しげなその道にサクは警戒してしまう。けれど空希さんのそばにいたサクが他のメンバーの先頭に立つ形になっていたせいで皆が視線で早く行くように訴えてくる。


 仕方がないので空希さんの細い背中を追いかける。茂みに進むとサクの身体を避けるように草木がまた身体を曲げてくれた。


 その様子に驚きつつも焦って駆け足になったせいで横から伸びる木の枝がサクを避けきれず頬を打った。


 注意しながら草木の動きを待ちながら先へと進む。


 意外にも行き止まりになっているかと思ったそこには細い道が伸びておりかなり奥まで進めるようになっている。


 こんな細いところに一体何があるというのだろう。他のメンバーは迷うことなくどこか足早にサクの後を着いてくる。


 それに追われるようにサクも足早に進むと、こちらを向いて待っている空希さんの姿が見えた。


「……っ」


 先を進んでいると、ふと妙な感覚を覚えた。


 一瞬視界が揺れたような、それともサクの身体が捩れたような妙な違和感だった。


 他のみんなはどうだったのかと振り返りたい衝動に駆られたが、また変な目で見られるのも嫌だったので何もなかったかのように前だけを見続けた。

 

 そうして道を抜け、空希さんのそばまでやってきた時。


「うわ……!」


 サクは思わず驚きの声を漏らしてしまった。


 他のメンバーもサクに続くように驚いた顔をしている。


 広がっていたのは先ほどの清水寺参詣路と同じ光景。だが、そこから見える景色はそれとはまるで別物だった。


 まず、並ぶ日本家屋は変わらないがそこにぶら下げられているのは提灯。そこには何か難しい漢字が記されている。多分店名か何かだろう。


 人も先ほどでも多いくらいだったのにその倍はいるのではないかと感じるほど賑わっており、その人の様相も黒いローブや魔女が被るような三角帽子を身につけていたり明らかにこれまでサクが知っているような人々と違うことがわかった。


 それだけではなく、彼らの肩には梟や黒猫。中には何か得体の知れない黒いゲル状の物体や怪しげな獣を引き連れている者までいる。


「へぇー。さっすが日本有数の隠れ里。人だらけじゃーん」


 そう言って凪が彼女の手にある黒い板。確かMnectだったかを街に向ける。


「おい」


「おい」


「おい」


「うひっ!?」


 すると、背後から突然野太い男の声が響く。


 振り返ると、そこには誰もいない。あるのは3体の地蔵だった。


「な、何?」


 凪が怯えるように沙羅の背中に隠れながら周囲を見渡す。


「誰もいないじゃん……タチ悪いイタズラだなぁ」


「「「ふん、誰もいないとは大層な言い草だな、小娘」」」


 その時、目の前の地蔵が突然目を見開いて凪を見る。


「きゃぁぁぁあ!?!?」


「ぬわぁ!?肩が砕けるぅぅう!?」


 それを見た凪が驚きの声をあげる。ついでに沙羅の肩を握りつぶしながら。


 おかげで沙羅も一緒に甲高い悲鳴をあげる羽目になっていた。


「ふ、【岩人いわひと】を見るのは初めてか?」


「ふ、見たところ桔梗院に入学する童と言ったところ」


「ふ、仕方あるまい。我ら希少種族ゆえ」


「い、岩人……?」


 息を揃えたような口振りの地蔵達におそるおそる凪が問いかける。

 

「岩人は岩の体を持つ種族だよ。あまり数はいないけど長い寿命と頑丈な体を持つ精霊に近い存在って所かな」


「空希カイ。貴様が来たということはこの童らは桜の園の生徒か」


「空希カイ。事前に我らのことを伝えておけ」


「空希カイ。こう毎回驚かれては敵わん」


「すみません。これも彼らへの洗礼かと」


 地蔵とたんたんと言葉を交わす姿はサクだけではなく他のメンバーの目にも異質に映るようだ。誰も何も言えずにその光景を眺めるだけだった。


 そんな置いてけぼりの皆に空希が向き直る。


「紹介します、彼らはこの清水の隠れ里を守る守護者です」


「守護者ってなんですか?」


 守護者ってなんだ?と思っていると端っこにいたドロシーが先に尋ねた。


「そうだね……まずこの場所だけど、凪さん説明できるかい?」


「え、あたし?」


 凪は気だるそうな顔をして「面倒だ」と訴えるが空希は気にもとめずにニコニコと凪の顔を見返した。


「……あれでしょ?移人うつろいびとが入って来れない常人とこしえびとの街」


 諦めたように語る凪に満足したように空希は続ける。


「そ。ここは通常の空間とは別の場所……空間と空間の狭間っていうのかな。魔法使いだけが出入りできる秘密の世界ってわけさ」


「そうなの!?すっごい!どうやって作ってるの!?」


 説明を聞いて沙羅が目を輝かせながら尋ねる。


「清水寺の力を借りて……って言ったらいいかな」


「どういうことです?」


 清水寺は大きな寺だ。なのでそこには不思議な力があるということだろうか。


「魔法の力の根源は人の心とか意思の力。それには色々な種類がある訳だけど、ここは昔から有名なお寺な訳。つまり昔からたくさんの人々の信仰とか願いとか、人の想いが集まる場所なんだ」


「故に、こう言った有名な場所にはそれを糧とした多くの魔法の力が集まるということ」


「故に、その力はこうした別の空間を作るに値する程強力なものとなる」


「故に、我ら常人はその力を利用し魔法族の街……移人に干渉されない街を作ったということである」


 同じような口調で話す3人の地蔵たち。まるで録音機械のようだと思った。


「でも、放ったらかしにしてたら力の暴走とか色々な問題が起こってくるからね。誰かがそれを監視しなきゃいけない」


「そう、それを管理するのが我らの務め」


「そう、清水の力を集めこの空間を形成維持する」


「そう、たまに紛れ込んでくる移人うつろいびとを追い返したりするのもまた我ら」


 魔法の本質は言葉とそこに宿る想いだと教わった。


 つまり、清水寺という大きな寺にはたくさんの人々の気持ちが集まってくる。


 寺や神社に行くとみな参拝するだろう。幸福祈願、恋愛成就、無病息災、立身出世、財福、良縁……。流派にもよるがそこには様々な願いが生じる。


 その想いを寺や神社に託し、祈る。積み重なるそれらは強い想いになり、そこに生まれる力もまた強大な物になるということ。


「ここは日本でも有数の観光地でもあるからね。国内でもトップクラスに大きい隠れ里ってわけさ」


「へぇ。だからここに来たって訳か」


 合点がいったように頷くリアム。


「うん、特にこの清水の隠れ里は流通に特化した隠れ里。ここでなら君らの学用品だってすぐに集まるさ」


 地蔵に別れを告げ、サク達は街の中へと歩き出す。


 見たこともない物だらけでどこに目をやったらいいのか分からなかった。


「さぁよってきなぁ!ほっぺた落ちちまうよぉ!」


「お、おぉ!?」


 大柄な女性が店前で売る茶色い餅のようなもの。口にした男のほっぺたが文字通り落っこちてサクの足元へ転がってくる。


 反対側の店には木彫りの仮面がズラリ。般若とか能面、狐の面が壁一面に飾られている。


「うわぁ〜……人相悪」


「なんだと小娘!もう1回言ってみろ!!」


「きゃあ!?しゃべったぁ!?」


 般若の面に呟く凪に般若の面が文字通り鬼の形相で怒鳴り散らかす。


「飲みねぇよ、姉ちゃん。ほぉらサービスだ」


「……まず」


 道行く怪しげな老人がドロシーに黒いコーヒーのような飲み物を渡す。一口含むとドロシーは舌を出しながらそれを老人に突っ返していた。


 そんなこんなで最初に訪れたのは本が大量に並べられた店。どうやらここで教科書を買うらしい。


「あの、欲しい本が……」


「あん?そっからテキトーに引っ張り出しな」


 キセルを口に含んだ白髪の店主はアゴで店の中央をさす。


 そこには大量の本が本棚ではなく大きなカゴの中に乱雑に積み上げられていた。


「クソジジイめ。その首食いちぎってやろうか」


「……気持ちは分かる」


 はっきり言って本をこんな適当に積み上げているだけなんて適当にも程がある。


 経営者としてどうなのかと思いつつも他の人たちも本棚ではなくここのカゴを漁っているのでそれに倣ってサク達も空希に言われた通りの本を漁っていく。


「あ!あったあった!【魔法基礎学】!」


「こっちは【日本魔法史】か……くそ、めんどくせぇ」


 ゴソゴソとカゴを漁ると意外なことに目当ての本が次から次へと掘り出されていく。


 それに本の海の中で揉まれたにしては本の痛みは無く、どれも新品同様だった。


「何でこんなに痛みが無いんだろ」


 他のメンバーにサクは尋ねてみる。みんなの反応を見る感じ、みんなも不思議そうに本を眺めていたのできっと不自然じゃないはずだ。


「不思議だよねぇ」


「おい、この本なんか変だぞ?」


 すると、リアムがそこらの本を手に取って開くと眉をしかめた。


 沙羅とサクで一緒にそれを覗き込んでみる。表紙は立派な本だが、中身は違う。何も書かれていない、真っ白なページがあるだけ。


「えぇー……まさか、偽物?」


 沙羅の言葉を聞いたサクは慌ててさっき手に取った【日本魔法学】の本を広げる。そこにはビッシリと中身が記載されていて本物の教科書だった。


 沙羅の方を見ると沙羅の本も同じ。本を広げてサクに見せてくれた。じゃあ、白紙なのは他の本だけ?まさか。そんな偶然あるか?


「おい店主。おめえふざけた商売してんな!!まさか俺らの本も……」


 リアムが店主に食ってかかろうとしたその時。


 突然、1人の若い男が1冊の本を引っ提げて店を飛び出した。


「ま……」


「万引だぁ!?」


 どうやらこの世界にも万引きという言葉はあるらしい。騒然となる店内。だが店主は冷静で新聞を広げたまま文字を目で追っている。


 いいのだろうか?と頭に疑問が浮かぶや否や、サクの目の前のカゴがガタガタと揺れ動き始めた。


 バララララッ


 すると、カゴの中の本が一斉に羽ばたき始めた。


 いや、本来は本に「羽ばたく」なんて言葉を使うのは間違っているだろう。


 しかし、まるで鳥が空を飛ぶように本が1人でに開き空を切って飛び始めたのだ。


 空飛ぶ本は真っ直ぐに万引き犯へ飛来し、一斉に飛びかかる。


「なっ、なん……うぎゃっ!?あぁぁぁあ!??」


 店の外から聞こえる断末魔。


 見ると、万引きの男は無数の本に噛みつかれるように飛びかかられ身動きがとれなくなっていた。


「すご……」


「これも魔法……?」


 一瞬のうちに巻き起こった惨状にサク達は空いた口が塞がらなかった。


「そうだね。魔法と言うよりは式神かな?」


「式神?」


「そう。あれは【本の虫】っていう魔法生物でね」


 空希の話ではどうやらあのカゴに敷き詰められていた本のほとんどはダミー。正確には魔法生物【本の虫】と言うらしい。


 本に擬態して本棚に潜んで外敵から身を守る生物で、人の知識や記憶を食らうそうだ。そうして手に入れた知識や記憶をその身に刻み、彼ら自身もまた1つの本として成るという。


 それを上手く活用することであんな芸当もできるとのこと。


「魔法の世界ではこんな風に魔法生物と契約を交わすことで使役することができる。外国では【使い魔】とか【サーヴァント】とか呼ぶんだ。日本では【式神】って呼び方をするんだけどけね」


「すごーい!私もできるかな!?」


「きっと沙羅さんにもできるようになるよ。しっかり桔梗院で勉強すればね」


「よーし!私頑張るぞー!」


 そう言って沙羅は元気よく本の海の中を掻き分け始める。それに倣う形でサクも再び本を探す旅時に出た。


 こうして購入した本は一旦店主に預け、後日送ってくれることになった。


 ………………さっきみたいに飛んでこなければいいんだけど。

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