第14話 桜の園⑦
朝食を終え部屋に戻ったサクは敷きっぱなしの布団の中へと沈む。
少々気疲れした。それに追い討ちのように満腹の頭に心地よい眠気が込み上げてくる。それに何もすることがないということが眠気に拍車をかけた。
何せ身体ひとつでここまで来たのだ。特に何もすることがない。とは言いつつも思えば家にいた頃は学校から帰って簡単な家事を済ませ、テレビでも見てボーッと日々を過ごしていた。
まるで老人のような生活だと自分で自分に呆れてしまう。
この部屋にはテレビも無ければできる家事だって限られている。せいぜいできることと言えば出かけることぐらいだろう。
幸い辺りは山だらけで何か面白いところがないか探すのは楽しそうだ。
だが、出かけるとなればアゲハに一言声をかけなければならないだろうか。何か1つするだけでもいちいち面倒くささを感じてしまう。
家にいた頃は叔父さんだけだったしこんな気を使う事もなかったのに。
そんなことを思いながら、ふとサクは部屋を見渡す。
麗らかな春の日差しが古い日本家屋を明るく照らす。それだけで春という名の季節の晴れやかさがサクの疲れた心を晴らしてくれるような気がした。
まどろみの中で新たにあてがわれた部屋を改めて眺めてみる。
「………………………………あれ?」
そして、妙な違和感に気がついた。
何かおかしい気がする。
部屋が違うのか。いや、そんなはずはない。紛れもなくここはサクにあてがわれた部屋。自室。それはこの部屋の様相からも間違いない。というか、1番奥の部屋なのだ、間違えるわけもない。
なのに、どうしてか自分の部屋がおかしいような気がしたのだ。
「………………」
まぁ、別に構わないか。結局違和感の正体に気が付かないまま再びまどろみに襲われ、そのまま眠りの世界へと意識を手放した。
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