第2話 スコアの秘密

「う…。やめて…。」

愛は首を絞められそうな感覚に陥った。

もうだめかと思ったとき、目が覚め、あたりを見回したらそこは自室の布団の中だった。


「夢か。」

愛は横にあるスマホを手に取り、ニュースサイトを見た。

夢ではなく、そこには「IT企業の山岸社長 溺死」のタイトルがあった。


愛は昨日のことをじっくりと思い出そうとしてみた。


メンバーのみんなで溺死のニュースを見た後、

松下が言った。

「山岸は殺されたのかもしれない。」


動揺している、みんなに松下は続けて言った。

「俺たちもひょっとしたら危ないかもしれない。」

「とにかく! 何かあったら俺に連絡するんだ。」


整理してみると、

自身が首を絞められたのは夢であり、山岸が死んだことは現実だったということだ。



メンバーのみんなは山岸の葬儀には行かなかった。

全員がマークされている可能性があるからだ。



そして愛はいつのように仕事へ出かけた。

駅まで歩き、そして電車へ乗り、つり革につかまりながら、

今までのことを考えているうちに会社へ着いた。


仕事中、山岸のことがずっと気になり、早く退社時間にならないかなと

思っていた。

しかし、こういう時は得てして時間を長く感じてしまうものだ。


それでも終業時間は来るものである。

仕事場のスピーカーから終業の鐘が「き~んこ~んか~ん」と鳴った。



愛は特に用事もなかったが、急いで会社を出た。


街を歩いているときに、愛の携帯が鳴った。


それは松下からであった。


松下は今から会ってほしいという。

なにか見せたいものがあるようだ。


愛は「うん」と返事をし、待ち合わせの喫茶店へ向かった。



松下はすでに席に着いて待っていた。

「おまたせ~」と元気よく愛は言った。

あまり暗い表情を見せても……と思ったのだろう。


見せたいものは何かと聞くと、

松下は大きな封筒を取り出した。


「みんなが集まっていた日に、これが届いていたみたいなんだ。」

差出人は『山岸』だった。


封筒の中にはいろいろな資料が入っていた。


松下は続けてこう言った。

「この資料によると、能力スコアは公正にスコアを計測していない。」


「公正ではないですって?」

愛はすこし驚いた様子で言った。


しかし、松下はこのことに関しては今はどうでもいいらしく、

他の問題点を指摘した。


「問題は…」

「能力スコアとは別に…、成果スコアというものも出していることだ。」


成果スコアの意味が分からず、愛は聞き直した。


「文字通り、人の成果を数値化したものだ。」と松下は答えた。


愛は納得がいってなかった。


「成果って、あいまいなものだし、そんなものを数値化できるの?」と

不思議そうに愛は言った。


「それは能力スコアも同じ事さ。」


確かに能力スコアもあいまいなものを数値化しているに過ぎないと

愛は改めて思った。


続けて松下は、

「とにかくやつらは人間を数値化したいらしい」と発言した。


愛は薄々と気づいていた。そして『やつら』とはいったい誰なのか気になった。


そうこうしているうちに、店の閉店時間が近づいてきた。


会計は松下が愛の分も出し、帰り際に「気を付けてね。」と

松下に言われ、お互い別れた。


二人を見ていた、一つの影があった。



それは神田奈央であった。



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能力スコア konoha @konohanoha

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