第2話
11.全校朝会の朝
祭の次の日は、月曜日であった。
樹季は朝起きるとまず、ベッドの下を見てみた。手を突っ込んでみると、昨晩隠した通りに巾着が出てきた。中身は謎の機械の腕輪とカードである。
「やっぱり、夢じゃなかったんだよな」
樹季はしげしげと銀色に光る腕輪を見ながらつぶやいた。熟考した末、鞄の中にそれを入れて登校する。肌身離さず持っているべきであると、そう思えた。
◆
週の始めの朝は全校朝会があるせいか、学校の様子は少しだけ慌ただしかった。
「おはよ」
樹季は教室の後ろのロッカーに鞄を納めながら、同じくロッカーの前でごそごそやっている杉浦に声をかけた。
「あ、おはよー鏑木」
杉浦はいつもとまったく変わらない様子で顔を上げた。昨晩不可解な化物と遭遇してから別れたきりだとは思えない通常な反応に、樹季はひっかかりを覚える。
だが、杉浦の方は、何気なく雑談に移行した。
「そういえば、知ってる?」
「何を?」
「神社の近くの森、昨日燃やされたって」
「へぇー?」
いつきは驚いたふりをした。正確に言えば違う意味では本当に驚いているので、知らなかったふりをした。
――らしいよって、その場にいただろ、俺たち。
樹季の頭にいくつか疑問が浮かび上がる。
そのとき急に、頭の中に直接声が流れてきた。
『シュラは倒されると、目撃した人間の記憶を消すんだ。僕みたいな特殊な事例とか、君らのようなドライバーの適応者は覚えてられる』
それは橘佐久夜のあの妙に耳に残る声である。
――っ、佐久夜? どこから話しかけてるんだ?
『廊下だ、廊下。ちょっと出てきてほしい』
その声は、高飛車に樹季を呼び出していた。
――もう何なんだよ、一体!
樹季はその頭に響く声に不快感を覚えながらも、従った。
「ごめん、ちょっと外すわ」
「あれ、トイレ?」
「まぁ、そんなとこ」
樹季は杉浦と別れ、そそくさと廊下に出た。
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