希望の闇、祝福の光

下東 良雄

GATE OF THE NEW WORLD

 闇の中をただ漂っていた。

 声を上げることもできず。

 闇の中をただ漂っていた。

 随分と長い間。


 闇の中で何かに縛られていた。

 身体を動かすこともできず。

 闇の中で何かに縛られていた。

 どこか心地良くて。


 闇の中に閉じ込められていた。

 逃げ出すこともできず。

 闇の中に閉じ込められていた。

 どこか安堵して。


 闇の色が変わっていく。

 不安色に。

 闇の色が変わっていく。

 悲しみの色に。


 闇の中でこころが叫ぶ。

 ボクは必要な存在なのか。

 闇の中でこころが叫ぶ。

 ボクの存在に意味はあるのか。


 闇の色が変わっていく。

 決意の色に。

 闇の色が変わっていく。

 愛の色に。


 明暗を繰り返す門が見える。

 目覚めの時が来た。

 明暗を繰り返す門が見える。

 旅立ちの時が来た。


 門を目指してボクは足掻く。

 居心地の良い闇から抜け出すんだ。

 門を目指してボクは足掻く。

 この希望の闇から抜け出すんだ。


 ボクは門をくぐった。

 今、喜びの歌を高らかに歌う!

 ボクは門をくぐった。

 あぁ、祝福の光を与え給え!




 母親の腕に新しい命が抱かれた。

 この世に生まれいでたその喜びを高らかに歌う赤子。

 この世に生まれいでたその喜びに頬へ口づけする母親。

 母親の瞳には柔らかな母性の灯火ともしびが灯っている。

 瞳から溢れるその灯りは目には見えない。

 しかし、その暖かな光は赤子を優しく包んでいる。


 祝福の光。


 その光に希望の闇から生まれいでた赤子は初めて感じるのだ。

 無償の愛を。

 その光に希望の闇から生まれいでた赤子は初めて感じるのだ。

 未来の幸せを。



 おぉ、すべての命に幸あれ。



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