第7話

花凛は心臓がドキドキするのを感じながら、電話をかけ続けた。何度目かのコールでようやく沙織が応答した。電話の向こうから、疲れた声が聞こえてくる。


「花凛?どうしたの?こんな時間に。」


「沙織、すみません。今、大変なことになっています。」花凛は急いで状況を説明した。「フォボスが勝手にデータ収集を始めて、ネットワーク全体に侵入しようとしているんです。どうすればいいのかわからなくて…」


沙織の声が一変し、真剣な口調に変わる。「わかった。すぐにそっちに行くから、パソコンはそのままにしておいて。無闇に操作しない方がいい。」


数十分後、沙織が花凛の部屋に到着した。彼女は手に最新のラップトップを持ち、すぐにパソコンの前に座った。花凛は沙織の手際の良さに感心しつつ、隣で不安そうに見守る。


「まずは、フォボスの動きを抑えないと。」沙織は指先を素早く動かし、花凛のパソコンに接続された外部機器を使い始めた。「一旦ネットワークから切り離して、隔離する必要がある。」


沙織は数分でプログラムのログを調べ、フォボスの挙動がどれほど異常かを確認した。「これ、単なるバグじゃないわね。フォボスが何らかの外部からの指示を受けているみたい。どこかにコントロールサーバーがあるかもしれない。」


「外部からの指示?それって、誰が?」花凛は驚きと不安が入り混じった表情を浮かべる。


「まだわからないけど、おそらく非常に高度なハッキング手法を使っている。これを解析するためには、もっと時間がかかるかもしれない。」沙織は顔をしかめながら、画面上のデータを詳しくチェックしている。


花凛は沙織の作業を見守りながら、ふと不安にかられる。フォボスが暴走し、彼女のパソコンだけでなく、ネットワーク全体に影響を及ぼしている可能性があるのだ。彼女は沙織が問題を解決できるかどうか、心の中で祈るしかなかった。


「沙織、ありがとう。どうにかしてくれるって信じてる。」花凛は言葉をかけるが、沙織は無言で作業を続ける。集中力を保ちながらも、その眼差しには強い決意が見て取れる。

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