第2話
ともかく、なんで私が晴季を好きでなければいけないのか。ああ、イライラする。私は中2の始めに転校してきて、もう2ヶ月が経つ。でも、この噂は私が転校して来る前からあるものだ。なぜなのか全くわからない。そして噂は1年以上続き、今ではほぼ全校生徒の知っている噂にまで発展した。本当に人の噂をして何が楽しいのやら。
「ああ、腹立つー!」
私が叫び、海莉は苦笑している。すると後ろから、
「あーあ、青水がまた暴れてるよー」
「青水さんは暴君だからねー」
「いやもう君主というか牛じゃん。暴れ牛」
という声が聞こえた。ぬぬっ。人を牛扱いするとは何様だ!後ろを振り向けば、古谷喜能胡、渡部篤樹、加納弘規がいた。やっぱりこの3人か。
「お前らさぁ!人を牛扱いするとかマジ何様⁉︎お前らの顔の方がよっぽど牛だよ!」
「はぁ⁉︎俺ら暴れてないし!」
「もうちょっとね、自分の暴れを把握した方がいいよ、青水さん」
「まあ、そうっすね、青水さん」
はぁ⁉︎なに3人で対抗しにきちゃってるわけ⁉︎1対3なんてまじで卑怯だろーが!
「このヒキョーもんめー!あとで殴り飛ばしてやっからなー!」
暴君モードが出てきそうになった私は慌てて海莉を連れて教室に逃げ帰った。ところが、私が教室に入った瞬間に、教室の空気が凍りついた。今までとは明らかに違う、空気感。その空気感が、記憶にあるそれとあまりにも似ていて、目の前が真っ暗になった気がした。その場に、教室に居られなくなり、私は海莉の慌てた声を無視し、教室を飛び出した。屋上への階段を必死に登る。一回でも止まったらもう動けなくなりそうだった。
屋上に出る。その瞬間、突風が吹いた。私は、その風のせいで、ずっと隠してた気持ちが、6年間ずっと溜め込んでた気持ちが、出てきてしまった。涙が溢れて、私は号泣した。1年生の頃から、ずっといじめられてきて、辛かった。友達を奪われたとき、裏切られたとき、絶望した。こっちに転校してきて、自分の頭脳は普通レベルなのだと思い知らされた。晴季に悩みを聞いてもらっても、どうしようもなく辛かった。迷惑をかけてしまっているのではないか、嫌われていないかと、ずっと緊張して、うまく話せなかった。自分の人生が自分で決められなくなって、神様はいないのかと、失望した。
今まで堪えてきた思いが、全て溢れた。そのおかげか、少しずつ、涙はおさまってきた。そこで、始めて寒さに気づいた。夏に近づいていると言っても、異常気象で、なぜか今日は雨が降って、とても寒く、そして私は半袖のため、凍えていた。だが、屋上から動けなかった。もう孤独になりたくない。だから、凍えそうな雨と寒さの中で、私はじっと耐えていた。
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