追放された悪役社長令嬢 宝月麗華~SSSランク越えのポーションを飲み世界最強の探索者になってアイドル配信者を助けたら、アイドルに溺愛されて、万バズ配信者に成り上がりましたわ~
3-6 結名の山岳エリアソロ配信1 《結名1人称》
3-6 結名の山岳エリアソロ配信1 《結名1人称》
中層配信4日目の夜。
配信終了後、麗華ちゃんに今後の話をする。
「明日からは攻略をストップ。麗華ちゃんは体調が完全回復するまで休んで」
麗華ちゃんの風邪がぶり返している。
今朝の時点で平熱まで下がったので、大事を取って今日は午後からダンジョン攻略を再開した。
でも、山岳エリアはこれまでのエリアより過酷だった。険しい崖を登り、冷たい雨風にさらされ、麗華ちゃんの体調はさらに悪化してしまった。
「わたくしの体調をお気遣いしてくださる心遣いは、パートナーとして誠に嬉しいのですが……」
「配信に穴を開けるのが心配?」
「ええ。視聴者に楽しい体験を届ける。それがわたくしたち配信者の使命であり、
「ファンは、推しの活躍をただ期待しているんじゃない。推しがキラキラしている姿を見たいんだよ」
結名はアイドルだけど、アイドルオタクでもあるからね。ファンの気持ちだってよく分かるんだ。
「みんなの声を聞いて」
スマホを操作しSNSを麗華ちゃんに見せる。
『今日の配信、麗華様ふらふらだったな』
『さすがの麗華様も山登りは疲れたか』
『毎日ダンジョン攻略してるもんな。そりゃあキツイって~』
「誠に不覚ですわ。明日の配信中はぼーっとしないように気を引き締めましてよ」
責任感が強すぎる麗華ちゃんらしいコメント。
でもね、麗華ちゃんに無理してほしいとみんなは思ってるんじゃないんだよ。
さらにスマホをスクロールしてコメントを見せる。
『無理しないで』
『ゆっくり休んで元気な姿を見せてほしい』
『麗華様の復活を信じてる!』
「どういうことですの……? わたくしに配信せずに休めと……!?」
麗華ちゃんの言葉に大きくうなずく。
「ファンにとって一番大切なことは、毎日配信を見ることよりも推しの幸せ。推しの幸せのためなら、ファンは何日でも待つんだから!」
結名が推しているアイドルに、1年以上休止中の人がいる。でも、そのアイドルは今も多くのファンに応援されている。結名だって、彼女がスポットライトの元に帰ってくるのを応援している、応援したい!
「ファンが麗華ちゃんを信じているように、麗華ちゃんもファンを信じて」
強張っていた麗華ちゃんの顔がほころんだ。
「さすがは一流アイドルですわね。また1つ教えられましたの」
「それにね、攻略はストップするけど、配信を止めるっては言ってないよー」
「どういうことかしら?」
「麗華ちゃんが休んでいる間は、結名がソロ配信しちゃうんだからね!」
「良い企画ですこと。話題を作って盛り上げれそうね」
「そんなにうかうかしてていいのかな~。麗華ちゃんが寝ている間、結名が麗華ちゃん担当を推し変させちゃうんだから~」
「うふふ……問題なくてよ。わたくしはファンを信じていますから」
そう言って、麗華ちゃんは布団をかぶった。
翌日。装備や荷物のチェックをしていると、麗華ちゃんが起きてきた。
「麗華ちゃん、起きたんだ。具合はどう?」
「最悪。熱が38度7分まで上がりましたわ。そんなことよりも、これを持って行きなさい」
麗華ちゃんから渡された物は、竹でできたホイッスル。
忘れるわけないよ。
結名と麗華ちゃんを繋いでくれたオーパーツなんだから。
「目明しの呼子笛……」
「ええ。これを吹けばわたくしに救援要請がいくわ」
中層初挑戦で結名がシルバーウルフに殺されそうになった時、結名は呼子笛を使った。そして、救援要請を聞いた麗華ちゃんが結名たちを助けてくれた。
「貴女の元に駆けつけますの――必ず」
麗華ちゃんの力強い眼。
39度近くの高熱にうなされている病人とは思えない。
麗華ちゃんはスゴイ! 麗華ちゃんは、結名がどんなピンチに陥っても絶対に駆けつけてくれる。
あぁ……! 結名にとって完全無欠のヒーロー、ううん、ヒロインだよ!
「ありがとう」
呼子笛を受け取った時、麗華ちゃんの手が触れる。
「……」
「早く受け取りなさいよ」
「うん……」
麗華ちゃんの肌はカサカサで熱かった。
やっぱり病人は病人なんだ……。
「結名は大丈夫だよ。ゆっくり寝てて」
「くれぐれも無理はなさらないでね」
「ふふ、それは結名の台詞だよ~」
「じゃあ、わたくしはもう一度横になりますの」
「お大事に」
ふらついた足取りで寝室に戻る麗華ちゃんを見送りながら、心に誓う。
麗華ちゃんに心配をかけるような無様な配信は、絶対しないんだ!
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