3-2 迷いの森に道路を通す 《麗華1人称》

 中層配信2日目。

 荒野エリアを抜け、森林エリアを攻略中。



「麗華ちゃん、また戻ってきちゃったよぉ……」


 足元にあるエナドリの空き缶を見て、結名が溜息。


 空き缶はわたくしたちが目印に置いたもの。

 ここは15分前にった。

 なのに、戻ってきたということは……。


「どうやら裏ダンジョン【迷いの森】に入ってしまったみたいね」


 迷いの森は、ここ39層にある裏ダンジョンだ。

 変わらない光景、所狭しと生えた木々、うねうねと曲がりくねった道。これらが方向感覚をおかしくさせる。

 入ったら最後。二度と出られない恐怖の森。



 ここで配信のコメントをチェック。


《ここで裏ダンジョン》

《今日中に湿原エリアに行ける?》

《そもそも出られるの?》


 視聴者の間にも動揺が走っているわね。このままじゃ、薄暗く不気味な森の空気に視聴者までやられてしまいますの。

 何とかしないと……。



「おーっほっほっほーー! これは好都合ですわ~~」


《どうした急に?》

《麗華様が壊れた》


「せっかく裏ダンジョンに入ったことですし、お宝ザクザク持って帰りますわ~」


《なるほど》

《裏ダンジョンだから、宝箱うまいよな》

《何が出るかな?》


 配信も上向きになってきたわね。

 帰れるかどうか分からない陰気な配信なんて、絶対再生数が伸びませんもの。パァーッっと明るくおかしく騒ぐのが、麗ゆならしいですこと。

 わたくしたちが陰気な森を明るくしてみせますわ。



 ん……、森を明るくする…………。


「わたくし、閃きましたわ!」


《何だ?》

《またやらかす気だ》

《わくわく》


「まずは手始めに――」


 ドシィィィィィーーーン

 目の前の大木を、手刀で一刀両断。


《大木切ったーーー》

《まさか……》


「結名、木の枝を切っておいてくださいまし」


「麗華ちゃんはどうするの?」


「決まっていまして――」


 隣の木も切り倒す。



「この陰気な森を明るくいたしますわ~~~!」



《森を明るくする(物理)》

《ダンジョンの創造主涙目》


 手当たり次第、高木をなぎ倒して進む。


「わたくしたちを邪魔する森なんて、全部伐採ですわ~~!!」


《森林伐採だーーー》

《アマゾンの伐採業者みたいな横暴w》

《(ニート万歳)歩く災害》






「あぁ……。なんとまぶしい……」


 光がほとんど差さぬ陰気な森はどこへやら。

 裏ダンジョンに光差す道が誕生した。

 これでもう迷うことはない。


「一仕事終えた後のおエナドリ! あぁ~、誠に美味しいですわ~」


《30分も経たないうちに道ができるなんて》

《お疲れさまー》

《仕事終わった後に飲んでどーすんのw》


「丸太、20本くらいできたよー」


「助かりましてよ」


 わたくしたちの後ろには丸太の山。


「伐採ついでに、宝箱1つ開けてきましたわ」


「やったぁ~」


 邪魔な木を倒したことで宝箱捜索も楽になった。

 一石二鳥ですの。



 休憩がてらコメントを読むことにする。


「流星翔蹴様『その丸太、何に使うんですか?』――それは……」


 ドドドドドド――

 話をしようとした時に、遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。


《何だ?》

《何かがこっちにやって来る?》

《まさか敵襲!?》


「麗華ちゃん、いっぱい来るよ!」


《森林破壊に怒ったのか!?》

《あんなに派手に伐採してたんだ。気づくわな》

《動物や原住民たちが猛抗議》


 ドローンを飛ばしてモンスターたちを撮影。


《うわぁ!》

《何匹いるんだこれ!》

《100じゃきかねーぞ》

《(ニート万歳)麗華無双の予感》


 映像を見た結名が跳び上がる。


「数多すぎだよ!? どうやって戦うの?」


「フッ……心配ありませんこと。わたくしたちの武器は――」


 側に置かれていた長重武器を肩にかつぐ。




「たくさんありましてよ」




《ここで丸太か!》

《みんな丸太は持ったな!!》

《みんな丸太は持ったな!!》

《みんな丸太は持ったな!!》


「受け取りなさい――」


 脚を高く上げ、


「お丸太プレゼントですわーーー!!」


 全力で蹴る!!


《お丸太がサッカーボールみたいに飛んでったぞ!》

《お丸太シューーーーートォォッッ!!》

《プレゼント=即死攻撃》


 ギャアアアアア!!

 先からモンスターの悲鳴が聞こえてきた。


「おーっほっほっほーー! モンスターの悲鳴が心地良くてよ!」


《麗華様、先制ゴオオオオオーーール!!》

《死んだモンスターは1体じゃ済まないだろうけどなw》


「まだまだプレゼントはありましてよーーー!!」


 ガコーン! ガコーン! ガコーン!

 次々に丸太を蹴り飛ばす。

 その度にモンスターの悲鳴が上がる。



 あら、丸太が残り1本になりましたわ。

 お丸太プレゼント終了~。

 最後の1本は武器にいたしましょう。


「さぁ、おいでなさい!」


 丸太を担いで宣戦布告。


「わたくしが全部ぶっ飛ばしますわ!」


 ……

 ……

 ……

 シーーーーーン……


「……あれぇ?」


《¥5000:あんだけ蹴ったら全滅でしょ》

《(ニート万歳)どうみてもオーバーキルです。本当にありがとうございました》



 結名がドローンを飛ばして、様子を確認する。


「モンスターはいなくなってるね。――あっ、道の先の森が、丸太になぎ倒されてる!」


《¥3000:森林破壊がますます進んだ》

《どんだけ飛んでるんだよ!》

《¥7500:そこまで計算していたのか……》


「と、当然計算していましてよ。わたくしの計画通り、このまま迷いの森横断道路敷設いたしますわーー」


 本当はたまたまですけど……。




 その後再び森林伐採と丸太を蹴って道を延伸し、横断道路が迷いの森の外に繋がった。

 こうして、迷いの森をあっさり脱出することができたのでした。



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 前回は評価をいただきました。

 応援していただいて、本当にありがとうございます。

 これからも応援よろしくお願いします。

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