2-3 裏ダンジョンの噂を耳にする 《結名1人称》

「今日は、ゆなのお家から雑談配信でーす」


《ここ、ゆななの家じゃなくね?》

《(百合の間に挟まりたい女)ゆなな引っ越したの?》


 コメント拾って読む。


「百合の間に挟まりたい女さん『ゆなな引っ越した?』――正解! ゆなの配信をチェックしてくれている方なら分かっちゃったかな?」


 さすがは結名のファンたち。

 撮影場所もちゃんと見てるね。


「実は――ゆな、昨日から麗華ちゃんとルームシェア始めましたーーー」


《( ゚Д゚) ナンダッテー‼》

《えっ! もう!》

《妄想がはかどりますな》

《俺もお金持ちと同棲したい》

《けしからーーん。いいぞ、もっとやれ》

《麗華様ルート攻略RTAかな》

《絶対○してるだろ》

《(百合の間に挟まりたい女)尊くて泣いた》


「コメントも盛り上がっていますわね……」


《麗華様、顔真っ赤になってる》

《麗華様、かわいい》


 麗華ちゃんの肩を抱き寄せ、カメラに向かってピース。


「みんな、ゆなたちを祝福してくれてありがとう~」


「これ以上、誤解を招くようなことを言わないでくださいまし~」


《おめでとう!》

《誤解じゃないだろw》

《てぇてぇ~~》

《(百合の間に挟まりたい女)ゆなな、お幸せに~》



 コメントを拾って読む。


「ペケポンさん『ルームシェアのきっかけは何ですか?』――昨日、麗華ちゃんのお家に行ったんですよー。そしたらね、麗華ちゃん、忙しいから3食エナジードリンクしか口にしていないって」


「おエナドリは忙しいビジネスパーソンの友。飲めば飲むほど、力が湧き目も冴えてきますの。皆様もお飲みになるとよろしくてよ!」


《おエナドリwww》

《限界社畜の俺、分かるー》

《頭カフェインかよw》


「そんな生活じゃ健康に悪い。ゆなが麗華ちゃんをお世話しなきゃ!――って思ったから、同棲を始めたの」


《推しの家に押し掛けるww》

《ブラック企業勤めの俺も、お世話してくれ~》


「よく働いてくれますのよ。食事だけでなく、掃除に洗濯。頼りにしてますわ」


「褒めてくれて嬉しぃ~」


 その後もルームシェア開始のトークで盛り上がった。




 次のテーマに移る。


「実はわたくしたち、今お金がありませんの」


《貧乏社長令嬢に転落!?》

《クラファンしよう》


「前の事務所辞めたときにお仕事、いくつかあったでしょ。ゆなが迷惑かけたから、その違約金を払わなきゃいけないの……」


《ゆなちゃんは迷惑かけていないよ》

《違約金、いくらあるんだ……?》

《クラファンしよう》


「ふっ……。お金が無ければ、リボ払いで払えばいいじゃない」


《社長、それあかんやつ》

《闇金転落フラグ》


 もちろん、このセリフはジョーク。


「そこで今日はみんなから、とっておきの節約アイデアを募集します!」




 視聴者からいくつもの節約アイデアが寄せられた。

 役に立つもの、ユニークなもの。色々だ。

 明日から試していきたいな。



「次はわたくしが読みますわ」


 麗華ちゃんがコメントを拾う。


「麗華様の荷物持ち様『毎日おエナドリだけで過ごしましょう。僕もそうやって、ご飯代を浮かしてスぺチャ代を捻出しています』――素晴らしい心がけですわね。早速今日から――」


「そんなのダメーーーーー!!」


「あら、どうして? カフェインを大量に摂取すれば、昼夜問わずお目々がギンギン! 忙しいわたくしには、カフェイン切れは死も同然!」


《完全カフェ中のセリフ》

《カフェイン。ダメ。ゼッタイ。》

《おエナドリ好きすぎて草生える》


「昼も夜も……(キュピーン)」


「前言撤回。適切な量を守ることは大切ね」



 麗華ちゃんがコメントを拾う。


「ほっしー様『実力行使で違約金を踏み倒そう!』――なかなか悪役にふさわしいアイデアじゃなくって!」


「そんなのダメーーーーー!!」


「……貴女、『違約金を払いたくない』っておっしゃってましたわね」


《ゆななも言ってたんかいw》

《悪役配信アイドル爆誕》



 時間的に次が最後かな。


「ゆなが読むねー」


 1つの投稿に目が留まった。


「早く読んでくださる?」


「あ、ごめん……」


 衝撃的な内容に、配信中だということを忘れて固まってしまっていた。気を取り直してコメントを読む。


「Ryuichiさん『節約アイデアじゃないですが、某中層にある未発見の【裏ダンジョン】を攻略するのはどうでしょう』」


 麗華ちゃんの顔色が変わった。


「裏ダンジョン……!?」


《何、それ?》

《そんなのあるの?》

《絶対難しいやつだ》


 結名が質問する。


「Ryuichiさん、裏ダンジョンって何ですか?」


《(Ryuichi)普通のルートから外れた裏道にある隠しダンジョンで、表ダンジョンよりも難しい分、高レアリティのオーパーツが手に入る》


「Ryuichi様、後でわたくしにDMを送っていただけませんでしょうか……」


《(Ryuichi)分かりました》



「Ryuichi様が、こんな貴重な情報を教えてくださったのは、自分ではクリアできないからだと思いますの。相当難しいと考えてもいいわ」


 麗華ちゃんが真剣な眼差しで結名を見つめる。




「わたくしに付いていく覚悟はよろしくて?」




 麗華ちゃんの手をギュッとつかむ。




「もちろんだよ!」




 結名は麗華ちゃんのパートナー。

 どんなに厳しい場所でも付いていくんだ。


「決まりね」


 私たちはカメラに向き直った。


「当面の目標は、裏ダンジョンの攻略! わたくし宝月麗華が暴れてみせますわ!」


《期待してるぞーー!》

《楽しみ~》

《ワクワク》

《裏ダンジョン攻略とか熱い》

《(蜘蛛衛生兵)裏ダンのペア攻略とか、絶対見る!》




「それでは、『麗華様とゆなのダンジョンちゃんねる』本日の配信はここまでですわ」


「チャンネル登録、各種SNSの登録。ぜひよろしくお願いしますー」


「「それでは、ごきげんよう~~~」」


《ごきげんようー》

《ごきげんようですわー》

《ごきげんよう》

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