第3話 奇怪な再開

 彼らは食事をとることにした。街のチェーン店のレストランに行く。そこには大勢の客が押し寄せていた。

 思えば今日は日曜日なのだ。夕方になっても体が疲れていないせいで、曜日の感覚がなくなっている。

 店にウェイトレスはいない。料理は機械が運んでくれる。彼は機械でも人間でも、飲食店に入るのは気が進まなかった。

 極度の心配性であるのだ。食材を買っていちから料理する過程を見なければ、どんな美味しそうな料理も豚の餌に思えた。

 しかし料理に時間をかけてられるほど、元々のスペックが高いわけでもない。そもそもが味覚に趣をおいてなかった。

 対面する形でテーブル席に座り、さきほどの話の続きをする。そうしていると前の家の主がいた。彼は着物を羽織り、髪の毛も流行のものではなかった。どこか時代錯誤な印象を与える男がいる。

 彼女は食事を終えると家に帰った。お腹いっぱいにはならなかったのだろう。彼は先ほどの男に用がある。男は焼いた肉を食べていた。

 自分と同じく女性と一緒にいたので、そこに突入するのは控えた。なんであれ異性と一緒にいるところに片づけた問題を蒸し返されるのは気分のよいものではないはずだ。彼も問題を感情に任せてどんどん面倒にしていくつもりはない。できるなら落ち着いたカフェなどで、ゆっくりと時間をかけて事の発端について話し合いたかった。

 男は名人と呼ばれていた。あの大量の壺は買ったものではなく名人が作ったものが多く含まれていたのか。新たな店に入ると彼は狂気を向けられた。

 さっきの老婆である。入口の前で血塗られた包丁を持っている。それもゲームのなかにみたいにいやに大きいものだ。鋸と言った方が適切かもしれない。

「争う気はないよ」と彼は言った。

「あなたはあの家をもらい受ける、適切な人間ではありません」

 老婆が震えながら言った。

「辞めてくれ。さっき会ったばかりじゃないか」

 彼に襲いかかろうとする老婆を名人が制する。彼はなにか弁明する必要があった。命の危機であるのだ。

「無断に侵入したのは悪かったと思うし、褒められた行いではない。でも、僕たちが関わるためには、結局のところあの方法しかなかったんじゃないか」

「年をとれば、また違ったかもしれない」と名人は悲しそうに言った。

「僕は今の僕たちの話をしている。若いうちに会った人のなかに、人生を好転させるような重大な人物と出会っただろうか。これは自尊心と関わってくるよ」

 彼は話しを続ける。焦せったりはしなかった。

「手放すってことは、なにか訳があるんだろ」

「それが教えられたら、君には頼まない」

 彼らはじっくりと腰をすえて話す。お互いを椅子に強制的に座らせた。

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