おせち?
「ほら、やるよ」
「……」
「どうした?」
「あの……。すみませんが、コレは……」
「この間のを真似して作ったんだ」
「もしかして、お節料理……です、か……?」
「他に何がある」
「いえ……」
そっと、目を伏せる。
相手が意気揚々と持って来たモノ、それは……
……語るには、あまりにも微妙な物であり。そして口にせずともその味(の悪さ)は、容易に想像が付いた。
「あの、お節という物は……わざわざお土産として持って来て頂くものでは無いので……」
「なんだよ、お前も嫌だって言うのか?」
「……お前『も』?」
思わず首を傾げる。
すると、苦々しい顔をして返事をされた。
「……今までに、もう8人から『いらねー』って言われた。作る前から断る奴までいたんだぜ?」
「あぁ、それは」
賢明な判断、という言葉を飲み込む。
「俺だって……一生懸命やってんのに……」
馬鹿、という呟きがこぼれるのを、やはり憐れには思う。
年明け早々、そんな寂しい思いはさせたく無い。胸の痛む思いに負け、彼女は微笑んだ。
「すみません。今から、一緒にいただきましょう?」
「え……っ」
「夕飯の支度、まだだったので……」
二人で食べるには量が多いが、そんな事はこの際関係なかった。
『頑張って作った物を誰かと食べる事』。そこが重要なのだ。
ただし――
その破壊的な味に、たまたまやって来たお隣さんをも弱らせたのは、別のお話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます