第2話-腐れ幽霊のいたずら。

「あーあ!」


ベッドで寝転がっていると、突然ずしっと重い感覚がした。

「どうした?」

「さっきのせんべい、

食べたかったなーって。」

「ああ、そういやルナって

煎餅に目が無かったもんな。」

上に乗っかってきた奴は、わざとらしく残念がっているルナ。

最近、首肩がやたら重いのもコイツの影響だが慣れた。

「そう!目がなくなるレベルで!」「怖えよ…」

そう言うとルナは天井まで高く浮いた。


「幽霊ってのは便利なものだ。移動自由だもんな。」

「ハッ…!!しかし幽霊って食べ物たべれない…!?」

「そりゃそうだ。どうせ透けるからな。」

「まーたミカはそうやって酷い言い回しを!」

ルナはいつもこんな調子だ。まったく…。

「幽体のボクには仕返しされないからって

舐めてるでしょー!!」

「実体あったとしてもオレには勝てないだろ。」「う…」

オレの返しに、言葉につまったルナ。しめしめと思っていると、

「まあ…そうだね」

「お?やけに素直だな」

「今のところミカには負けっぱなしだからね。」


「懐かしいな。昔は一つしかない

音楽プレーヤー巡って争ったよなー。」

「今ではスマホがあるからね~」

今ではいい思い出だが、当時はそれ一つに必死になったものだ。


「あの音楽プレーヤー、オレらのお年玉全部で

ギリギリ足りたくらいだったからな。」

「アレ一つによくあんなに本気で争ってたよ…

あ!!それでさぁ!!」

突然声を張り上げ始めたルナ。オレにしか聞こえてないとはいえ、大声はやめて

ほしいものだ。

「ケンカする度に

ミカが暴力勝ちしてさ!!ずるくない!?」

「ふふーん…小学生時代のオレは

柔道を習っていたのさ✨」

「まったく。まったく者だね、ミカは~」

「まったく者って何だよ…」


「でも結局はボクが抗議して

替わりばんこに持って帰ったよね~」

「そうだったな。」

時計を見ると、もう八時半だった。

「そろそろ風呂いくか」

「はいは~い

憑いていきまーす!」


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


天井から落ちた雫が、水面に波紋をつくる。

…脚色すれば聞こえはいいが、実際はただ風呂に入っているだけである。

「…ミカ、筋肉ないねー」

「うっせぇ!!ほっとけ!」

透ける身体で、一緒に湯船につかってみるルナ。

見た目が制服のままなので違和感しかない。

代わりに自分の身体を見るが、柔道やっていた昔とは打ってかわって

細身になってしまった。…もっと晩御飯たべておくんだった。

「…まぁどのみち、

オレに触れられないミカは

オレを超えられないってことだ。」

バトル漫画の言い回しをそのまま言ってみたが、ルナには響かないようだ。


…どうやらそういう訳でもなかった。

「もう、ミカってば。

そんなこと言っちゃってさ…」


「……ほんと、舐められたものだね…」

「っ…………みッ」


「みみもとで

しゃべんなぁ……っ…!!///」

くすぐった過ぎてつい、変な声になってしまった。

ルナを遠ざけようと手を振り回し、バシャバシャと水が跳ねる。


「え~~ボクの甘い囁きひとつでうろたえてるの~?♡」

ルナが満足げなのが腹立つ。

なんでしたっけ?」

コイツ………💢煽り属性強すぎるだろ…!

「みたか!幽霊の反撃だ~!あはははは~!!」

「びっくりするからマジでやめろ…///」


「あーおもしろ!!

なんてからかい甲斐のある奴なんだろ!

あはは!」

でも、腹をかかえて愉快そうにする親友は、見ていて嫌な気はしない。

「あーたのし~な~~!

ミカといると!」

「うるせえなぁ……」

オレはルナに聞こえないよう、小さく小さく


「………オレもだよ」


と囁いた。

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