第5話 戦闘準備



  シスターさんから貰った道具袋から、日本刀が出て来た。


 「有難い、これで俺も戦う事が出来そうだ。」


 しかし、カタナか。俺は学生時代剣道の授業を嗜む程度しかやったことが無い。


 「まあ、無いよりマシだな。カタナか、上手く扱わないと自分が怪我をしそうだ。


 カタナを振って、自分の足を切りたくはない。

 簡単に素振りをしてみて、様子を見る。うん。いける。


 やはり俺は日本人だという事か、カタナを持つと血がたぎる。


 「サムライってカッコいいよね、憧れる、シビれる。」


 さて、あとはこの本だな。


 スキルブックだ、一体どんなスキルが習得できるのかな?


 本の表紙には特になにも書かれていない、だが本の意匠を見ると只の本じゃない事は解る。


 「兎に角、読んでみよう。じゃなきゃ始まらん。」


 俺はスキルブックを開いて読もうとしたが、本のページにはなにも書かれていなかった。


 「どういうこった? これはスキルブックだよな?」


 すると突然、目の前が真っ白になり、意識をもっていかれる感覚を覚えた。


 「うわっ!? なんだこれ!?」


 俺は気を失い、地面に倒れた。


 ………何も無い空間、そこに俺は居る。それだけは解る。


 「ここは一体?」


 すると、何処からともなく声が聞こえた。


 「あなたに問います、どんなスキルをお望みですか?」


 ふーむ、どんなスキルでもか、多分一つだけとかなんだろうな。


 「どんなスキルでもいいのか?」


 「はい、どのようなスキルでも構いません、但し、一つだけ。」


 やっぱりな、うーむ、一つだけとなると色々と悩むな。


 戦闘に特化したスキルか、生産系のスキルか、はたまたテレポートとかの特殊なものか。


 マジで悩む、どうしようかな。ちょっと聞いてみようかな。


 「試しに聞きたいんだが、俺は強くなりたいんだ。そういうスキルはあるか?」


 「例えば?」


 「うーん、そうだな、力が溢れるとか、素早さが上昇するとか、あとは武器の扱いに優れるとか。」


 「どれか一つだけです、一つだけスキルを望んで下さい。」


 やっぱり一つか、だったら。


 「俺は強くなりたい、だから、強くなるスキルが欲しい。」


 「………………。」


 おや? 黙ってしまわれたぞ? 大丈夫だろうか?


 「おーい、強くなりたいんだって。聞こえてる?」


 暫くしたのち、俺の視界が鮮明になり、元の教会の外で目を覚ました。


 「う、うう~ん、目覚めたか。」


 ここは俺が教会から逃げて来た外だ、見た景色がそう告げている。


 「結局、なんだったんだか?」


 俺が落胆していると、頭の中に直接声が聞こえて来た。


 「スキルを習得しました、望んだスキルです。戦闘で魔物を倒すとレベルが上がるスキルです。」


 なんと!? 確かに俺は強くなりたいと願ったが、まさかレベルアップするスキルを貰えるとは。


 RPGとかではお馴染みの、あのレベルアップして強くなるタイプという事だろう。


 うーむ、良いスキルを貰ったかもしれないな、下手なスキルよりこっちの方が性に合っている。


 「勝手知ったるゲーマー経験、有効に使わせて貰うぜ!」


 ステータスとかは見る事が出来ない、そこはゲームっぽい感じではなさそうだ。


 つまり、自分でレベルを把握しないといけないというスキルだろう。


 使い勝手が良いのか悪いのか、今一よく解らんな。


 だが、これで俺は戦闘で勝利する度に、レベルアップして強くなるという事だな。


 さしずめ今の俺のレベルは1だろう。


 ここからだ、ここから俺の第二の人生が始まる。


 もう黙ってやられるつもりはない。


 全力で抗ってやる、行ける所まで行ってやる。


 自分がこの世界で、何が出来る奴なのかを見極めてみよう。


 「よしよし、なんだか楽しくなってきた。ここから俺の冒険がスタートする訳だな。」


 よっしゃ! 一丁いきますか!!


 俺はカタナを鞘に仕舞い腰のベルトに提げ、道具袋を背負い、次の目的地を思案した。


 「………………。」


 だが。


 「………………。」


 足が、自然と向いたのは、今まで俺が居て逃げて来た教会だった。


 「試したい、あのオーク共と戦って勝ちたい。」


 このままやられっぱなしってのは、俺のしゃくに障る。


 「負けるかもれない、相手は3体、こっちは一人。分が悪い。」


 だが、俺の顔の表情は意外にも笑っていると思う。


 自分でも解らないが、今の俺は凄く楽しい。


 「戦って勝つ、いいね、良い感じだ。今まで下に見ていた奴から負ける顔を拝む。良いね。悪く無い。」


 自然と、身体に力が漲ってくるのが解る。今の俺はとても強気な気分だ。


 何故かは解らない、だが、解る。俺は今、とても強い感じだ。


 「負けても良い、死ぬだけだ。だが、タダでやられるつもりは無い。」


 負けたら死ぬ、だが、勝てば。


 「強くなる、俺はどこまで強くなるか解らないが、せめて、この異世界で生き残れるくらいにはなりたい。」


 さあ、始めようか。俺の物語を。


 俺は世話になったシスターさんの所まで戻り、オーク共と戦う決意をした。


 俺の身体は、見違える程に動きが軽かった。


 「よっしゃあっ!! 気分が乗って来た!! 一丁いきますか!!!」




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