公爵夫人side
あの頃に帰りたい。
私はローザ・フォン・ルーンベルト。公爵夫人として日々忙しく過ごしているわ。
私には愛する夫と可愛い子どもたちがいるの。
1番上の息子とは血の繋がりはないけれど、良い関係を築けていると思うわ。週に一度、お茶会をしているの。最近はそこに娘も加わったわ。愛し愛されてとっても幸せな日々をすごしているのよ。
でも、2番目の息子とは数年会っていないわ。あの子が5歳の時に公爵邸にきて、ずっと引き篭もっているのだもの。晩餐会やお茶会へのお誘いの手紙を出しても返事はなし。侍女長さんと夫が慰めてくれるけど、本当はずっと悲しいの。私はこんなに愛しているのに、あの子だけは愛してくれないの。
そしてある日、それは起こったわ。あの子が娘を叩いたの!あの子は優しい子だと思っていたから悲しかったわ。私がいけなかったのかしら。公爵家に連れてきてしまった私が。でもあの時は公爵様への気持ちが抑えきれなかったのよ!ああ、でもこの幸せな日常をあの子が壊すなら、あの子を遠ざけるしかないのよね。辛いけれどあの子の部屋を母屋から離れに移したわ。一日中泣いてしまって夫を困らせてしまったわ。反省しないと。
でもまたいつか、あの子と昔のように話せる日が来るはずよ。だって家族だもの。
でも、あの子は私を置いて逝ってしまった。
あの子は病気だったそうよ。私に教えてくれたら腕のいいお医者様を探したのに!
あの子は幼馴染のリックくんに全てを譲りたいのですって。私には何一つ遺してくれないのね。ひどい子。
リックくんは相変わらずだったわ。貴族でも平民でも態度が変わらないのがあの子の長所でもあり短所でもあるのよね。上の息子が少し気にしていたみたいよ。
そしてリックくんは手紙を残してあの子を連れて行ってしまった。ひどい!あの子は私の子なのに!
でも、手紙を読んで、あの子のことをなにも知らなかったことを知ったの。
私はあの子の母親なのに、あの子を守れなかった。
母を慕っていたあの子はもう、とっくにいなくなっていたのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます