公爵side
私、ベンジャミン・フォン・ルーンベルト公爵には最愛の妻と愛する息子が2人、そして妻にそっくりで目に入れても痛くない娘がいる。
息子のうち1人とは血の繋がりはないけれどーーそして拒絶されているけれどーーいつか本当の家族になりたいと思っていた。なれると思っていた。
その子が娘に手を上げたと聞いた時、目の前が真っ赤に染まった。今までは妻の子だから、と許していたが、これは許せない。妻と話し合って彼を離れに送ることにした。たった9歳の子を親から離すのは心苦しかったが、娘に危害が加わる危険性を放置できなかった。幸い、今まで教育を担当してくれていたーーしかし彼に拒絶されたので現在は教師ではないがーー侍女長が彼を直接世話してくれるということで、安心できた。
しかし、彼は天へと旅立った。
その報告を受けた時の妻の取り乱しようは凄まじいものだった。医者を伴って家族皆で離れに向かうと、彼は眠るように寝台に横たわっていた。妻が泣き叫ぶのを見ると心が痛い。医者の話だと、彼の死因は病で、しかも死後数日は経っているだろうとのことだった。死後数日?その間誰も気が付かなかったのか?
息子が彼の遺言書を読み上げると、彼は自身の財産を全て友に譲るらしかった。幸い、彼の公爵家の後継の権利は娘が生まれると同時に破棄しているので、まあ問題はないだろう。彼は公爵家の財産を散財していたので、宝石や衣類などを譲るとなったら相当な数になりそうだ。
そして彼の友がやってくる。彼は実に平民らしい態度で私たちに接した。だが普通の平民と違って私たちに対する敬う気持ちというのが一切感じられない。彼の友人らしいと言えばらしいのかな。
彼の友は息子を伴って出て行った。そして帰ってきたら彼の遺体を運んで行ってしまった。止めようとしたが、息子に首を振られた。彼の友は彼の遺体以外何も持っていかなかったが、彼の財産はまた取りに来るということだろうか?と呑気に考えていると、息子が衝撃の事実を話し始めた。風魔法?栄養失調?働いていた?6歳から?では公爵家の財産はどこに消えたのだ?
彼の友は息子に手紙を託して行ったらしい。皆で読んでみると、私は彼に対する気持ちが180度変わったのを感じた。
これが事実だと信じたくない。
そして妻が壊れてしまった。私たちがしたことを考えると当然なのかもしれないが、せめて妻に形見くらいは残して欲しかった、と思ってしまう。
私の血の繋がらない息子へ
これが君の復讐なら、大成功だ
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