リックside
公爵家に呼び出された。嫌な予感がしたが、逆らえないので一張羅を着てとりあえず行く。
着いたら応接室とやらに通された。
公爵家の面々が勢揃いしている。やはり、そうなのだろうか。
「俺はお貴族様の礼儀作法なんぞ知りませんぜ」
と言ってから少し後悔した。一平民の俺はこれだけで首が飛ぶかもしれない。
しかし公爵が
「礼儀作法など求めないよ。楽にしてくれ。」
と言ってくれた。じゃあ遠慮しなくていいな
「久しぶりね、リックくん。今日呼び出したのはね、その、実は、あの子が天に旅立ってしまったの。そしてあの子の遺言書にあなたの名前があったからあなたにお話を聞こうと思って」
と公爵夫人が言った。
「やっぱりそうだったのか。だから俺は早く医者に行けって言ったのに」
思わずそう言ってしまった。
その言葉にあいつの兄だと思われる男が反応した。
「君は、あの子が病だと知っていたのか⁉︎」
やはりこいつらは知らなかったのか。
俺はその言葉には答えずに、あいつの意思を尊重する。
「遺言書には俺に全て譲るって書いてあっただろ?まずあいつと俺を会わせてくれ。」
そう言うとあいつの兄がムッとした顔をした。高貴なお方(笑)は無視されんのに慣れてないのか。
公爵夫妻は迷いながらも俺をあいつの部屋に連れて行った。
あいつから聞いていたとおり、酷い部屋だな。一応見かけは整っているけど、リネン類は古いものばかりだし、クローゼットの中にはシャツとズボンが一枚ずつしか入っていない。当然宝石類もなかった。公爵家のやつらはこれに気づかないなんてどんな神経してんだろうな。
寝台にはあいつが眠るように横たわっていた。栄養不足でパサパサの髪もヒョロヒョロの腕も最後に会った時と変わらない。そして俺のやるべきことは変わらない。まずあいつの首飾りを取った。
「少し用事があるから3時間後くらいにもう一度来る」
そう言うと公爵が慌てたように言った。
「待ってくれ、君はこの子の遺言書の意味がわかっているのか?君に全てを譲ると言ったのだぞ?それなのに君はこの子よりも優先すべき用事があると言うのか⁉︎」
やっぱりこいつらはなんもわかっちゃいない!こいつの意思を継ぐための用事だってわかんねーのかよ
「その用事ってのがこいつの望みだ。別についてきてもいいぜ」
そう言って出て行くと、あいつの兄がついてきた。
「君がなにをするのかは分からないが、それがあの子の意思というなら付き合おう。馬車を使うか?」
俺たち平民には使えない馬車を使わせてくれるってんならちょっとは早く終わるかもしれない。癪だがその言葉に乗った。
そしてあいつの意思を遂行した。
少しだけあいつらに意趣返しもしてやったが、まあ良いだろう。
なあ親友、お前のこと忘れないぜ。
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