アタシウス戦記

本多裕樹

第1話 宮居での遭遇、始まりの時に




               序

宮居にひれ伏して、願う人があった。その影に見えるのは炎のような光る人物があった。時にその人に語りかける。

「この地にいずれ来るだろう戦乱、その死の時に備えよ。その禍をおさめるのはお前だということセリアよ。この時より立て」

炎に向かって女性は語りかける

「主よ、私にそれができますか。私にはその自信がありません。」



     お前は語り

     それで力を得る

     望むものは力であり

     君のそばにあってその力をもって

     国を救え


「であるならば、どうすれば」

「お前の言葉によって世界は創造されよう。それが汝の力なり」


宮居の炎を見て恐れ入った私は逃げてしまった。

夜の出来事であった。あの神殿の巫女は何を語り、この国を救うというのか、思えばあの炎は神霊ダイモーンだというのだろうか。国の災難はあるのだろうか。


そのために準備がいる。   そう思った。


日々いろんなことがあるが、こういう奇怪な出来事は初めてかもしれない。王都の外れにある山を登ってきたが、もしかしたら、これは声をかければなんとかなるか。


ダイモーンがその隅にいる男に気づいている。チラチラとこちらを見られている感覚がある。


「主よ、私は黙って聞きます。お言葉いただきたく思います。」


「え、誰かいるの」影の女性は乙女であった。「私が見えるの」

「そうです。見えます。あなたのお声も」


   王のひこばえか、汝、我々の血統の者、

   我々の姿が人となった姿

   しかし、お前は未来、横暴となり

   この地を滅ぼす

   それを知ってか

   知らぬか

   しかし、汝、中庸を知れば

   国は堅固なものになる。


月夜の中、昼を見るように、炎は天空の者であると悟った。私は身を引き「予言のお言葉感謝申し上げます。」と言い神殿を去っていった。


夜道、帰り道、私は何か、熱いものを感じた。なぜ、そのような気持ちになったか理由はわからない。しかし、このことは秘密にしなければならない。もし、しゃべり広げるならば、呪われてしまう。いや、もうすでにあのような予言で呪われたようなものだ。


夜を巡り、月を見ながら、城まで行く。実は抜け出して神殿の巫女の予言を見に行ったのだったが、ある程度、収穫をえた。私の身辺に対する予言である。


私が横暴になる。


これさえ、気をつければなんとかなるのか。


もう少しで街に入る。そうして少し酒でも飲もうと思った矢先、隠密の格好をした剣をぶら下げて私を待ち伏せしている者があった。


ヨークの王族

しとめます。


抜剣の音が聞こえ、すぐに攻めかける。上着を相手にかぶせて私はナイフを手にして相手の腹を円月殺法で周りの下手人を斬る。血がしぶき相手の剣を取り空中に身を隠し、頭から飛翔した剣が斧のように真っ二つのした。あの円舞の高速剣で十人を斬った。


血糊が付いてしまったので森の茂みで上着を脱いでまるで農夫のような格好になった。

「やはり、夜道を歩くのは大変だ。」

「ヨークの王族よ

何も斬ることはないのではないか。」


と、一人の老人が言う。

「何、見ていたのかご老人、」

「おぬし、その剣、」

「ああ、知っているのか、この剣の秘密を」

「いやいや、知っているも何もわしのじゃよ。どこで手に入れたかはわからないが、とうの昔に捨てて封印したものだ。私の剣だからの。それはな風も切るし、炎も出せる代物じゃ。ヨークの王族、それは呪いですぞ。」

しばらく沈黙があって、そこを去り、老人の言葉を忘れたかのように前を進む、老人はかなりの使い手であることをなんとなく感じ間合いを取るようにその場から離れよとした。しかし、振り返ると老人は消えていた。


「何だったのだろか。この剣の秘密はあるにはある。もしかして、」とハッとした。

影を追うものがある。月夜にしじめく叫び、音も静かに揺れるような感情の高鳴り、私は農夫の姿で街に入って王城に帰る。

帰ると言ったもの、城壁を通ったのだ。体を光にして瞬時に部屋に戻った。これもこの魔剣の所為か。


「お前はその剣をどうしたか」


今日は、神殿で予言も聞けた。私の未来に破滅があるのだろうか。あるとしたら、心に何か屈折した世界がこの国を襲うのだろうか。


「ヨーク王家には謎があるが、王宮に何かあるはず、侍中に話してみよう。彼なら、気軽に話せるし政務にも預かっているところもある。この剣に魔が住み着いているのはさっきの戦闘でわかった。だいたい私もどこで手に入れたか謎だ。いつからあったのだろうか。」


月は黄金に輝き、清浄ですらある秋の夜、時にこの剣の謎はありし時、ヨーク王家に霞のように消える知恵があるのだ。

諸侯たちはヨーク王家を崇めているが、その王家の血統にかつて昔の大戦の英雄の流れであったこと、


老人のあの言葉、


この世界にまたもあろう神殿の軌跡は私たちに何を知らせんとするのだろう。


王子は花を見て月を眺め祈りつつ、夢を見ていたのだった。


「王の道は二つにある。王道か暴君か、ヨークよ、お前はどちらを選ぶか。剣の炎に聞いてみよ」


月夜に安らかに






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