第十八章 反対の心境

かけるは今日も配信で復讐者を募っていた。今回の依頼者はタケル。彼は深刻な声で、おじいちゃんが病気で余命3ヶ月と宣告されたことを告げる。


「僕はいつもおじいちゃんから小言を言われてうんざりしています。死んでもらったら、もう文句を言われなくなる。でも、そうしたら逆に、今までの小言に文句を言えなくなる。だから、長生きしてもらって、ちゃんと文句を言いたいんです。」


翔はその依頼に一瞬、驚きを隠せなかった。しかし、タケルの本音がその依頼の裏にあることを理解した。少しツンデレな形の復讐だったのだ。


「人の命を書き換えることは不可能ですが、少しでも元気になる手助けはできるかもしれません。それでよいですか?」

タケルは少し間を置いてから、深く頷いた。「ええ、もちろんです。」


翔は言語製造黒魔術プログラミングブラックマジックのコードを作成し、タケルの願いを反映させるためのコードを作成した。それからしばらくして、タケルから再び連絡が来た。


「おじいちゃんが、先日亡くなりました。余命3ヶ月と言われたけど、あれから1年も生きてくれました。たくさん文句を言ってやりましたよ。もう本当に、散々ね……」


タケルは言葉を詰まらせながらも、話を続けた。


「でも、そのおかげで、おじいちゃんの笑顔をたくさん見ることができました。翔さん、ありがとう。あなたのおかげで、最後にちゃんとおじいちゃんと向き合うことができた」


翔はその言葉に胸が締め付けられるような思いを感じた。タケルが求めていたのは、ただの復讐ではなく、おじいちゃんとの時間を大切にし、彼との関係を整理することだったのだと気づいた。


「タケルさん、あなたがその時間を大切に過ごせたのなら、それが何よりです。」


タケルの声は涙で震えていた。「最初はただ意地を張っていたんです。でも、最後にはおじいちゃんに『ありがとう』って言えました。あなたの言語製造黒魔術プログラミングブラックマジックのおかげで、心からそう言えたんです。」


翔は静かに頷いた。彼が手助けしたのは、命を延ばすことだけではなく、タケルの心を救うことだった。タケルにとって、おじいちゃんとの1年間は大切な時間となり、その中で心の整理をつけることができたのだ。


翔は配信を終えた後も、しばらくの間考え込んだ。自分の行いが本当に正しいのか、まだ迷いはあった。それでも、人々の願いを叶え、彼らが前に進む手助けをしていると感じられる限り、翔はこの道を歩み続けるべきだと決意した。タケルのように、誰かの心を救うことができるのなら、それがどんな形であっても。



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言語製造黒魔術 雨冠雫 @crownsizuku

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