第八章 報復の代償

野球部員のさとるは、毎日甲子園を夢見て汗を流していた。だが、彼の努力はなかなか実を結ばず、1年でレギュラー入りを果たしたクラスメイトのかずきに嫉妬心を募らせていた。かずきは練習が終わるとすぐに帰り、特別な努力をしているようには見えなかった。何でもできる天才型のかずきに対して、さとるの心には次第に憤りが募っていった。


ある日、さとるはネットサーフィン中にかけるの配信を見つけた。翔の言語製造黒魔術プログラミングブラックマジックに心惹かれたさとるは、かずきに痛い目を見せることを決意し、依頼を送った。


「依頼内容は、そのかずきくんに痛い目にあってもらうでいいですね?」

翔の問いかけに、さとるは力強く頷いた。


翔はさとるのために特別なコードを書き上げた。そのコードが実行されてからしばらくして、かずきは交通事故に遭い、足を怪我してしまった。怪我の影響で、かずきは全力で野球をすることができなくなってしまった。


最初は勝利の喜びを感じていたさとるだったが、次第に過去の記憶がよみがえってきた。自分が熱中症で倒れたとき、かずきが優しく声をかけ、気にかけてくれたことを思い出した。そして、かずきが練習後にすぐ帰るのは、家で人一倍努力していたからだという噂を耳にする。


「かずきは天才なんかじゃなかったんだ…」

さとるは愕然とした。かずきは陰で努力を重ね、チーム全員と一緒に甲子園を目指していたのだと知った時、さとるの胸には深い後悔が湧き上がった。


「僕が彼を…」

さとるは涙をこぼした。かずきの努力と友情に対して、自分がしたことの愚かさに打ちのめされた。


かずきが足の怪我で野球ができなくなったことに責任を感じたさとるは、翔に再度接触した。しかし、翔は一度実行された魔術を元に戻すことはできないと言った。さとるは自分の行いの代償を背負い、かずきに謝罪することを決意した。


「かずき、本当にごめん。」

さとるは涙ながらに謝罪し、かずきもまた、さとるの気持ちを受け入れた。彼らは過去を乗り越え、新たな友情を築くことを誓った。


翔はその様子を見守りながら、言語製造黒魔術プログラミングブラックマジックの力とその影響の大きさを改めて実感した。人々の願いを叶えることで、幸せをもたらすこともあれば、深い傷を残すこともある。翔の心には、次なる依頼への思いが静かに刻まれていった。

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