第七章 最愛の偽物

黒輪翔くろわかけるのもとに、次なる依頼者が訪れた。彼の名はゆうま。彼は生物以外にしか愛を向けられない対物性愛者だった。相談内容はシンプルだが途方もないもので、「僕を二次元の世界へ連れて行ってくれ」というものだった。


「二次元へ連れて行くことはできませんが、VRを用いてあなたを二次元の世界へ没入させ、さらにAIを用いてあなたの症状にあった女の子を作成することなら可能です。」

翔は慎重に提案した。

ゆうまはこの提案に目を輝かせ、コードの作成を依頼した。翔は迅速に作業に取り掛かり、ゆうまのための特別なプログラムを開発した。プログラムが完成し、ゆうまは専用のVRデバイスを装着した。


擬似的な二次元空間に入ると、そこには彼の理想の女の子が待っていた。彼女はAIによって生成され、ゆうまの対物性愛の特性に最適化されていた。初めて会ったときから、二人の間には特別な何かが芽生えた。


「こんにちは、ゆうま。あなたと過ごす時間を楽しみにしているわ。」

彼女の声は甘く、優しかった。ゆうまはその瞬間に恋に落ちた。


日々が過ぎるごとに、ゆうまと彼女の絆は深まっていった。彼は現実の世界では感じることのできなかった愛と幸福を、この二次元の世界で見つけた。しかし、翔は心の中で複雑な感情を抱えていた。


「これで得られる愛は、真実なのか、それとも偽物なのか…」

翔はその答えを出すことができなかった。彼が提供したのは擬似的な幸福であり、現実とはかけ離れた世界だった。しかし、ゆうまにとってはこれが真実の愛に他ならなかった。


ゆうまは現実世界に戻ることを拒み、ほとんどの時間をVRの中で過ごすようになった。彼にとって、そこでの生活が現実以上に意味のあるものとなっていたのだ。


「ありがとう、翔。君のおかげで僕は初めて本当の愛を感じることができた。」

ゆうまは感謝の言葉を翔に送った。


翔はそれを聞いてもなお、心の中で葛藤を抱えていた。彼が提供したのは、あくまで現実から逃避する手段だった。しかし、その逃避がゆうまにとって救いとなったことも事実だった。


こうして、翔はまた一つの依頼を完了した。だが、その成功が真の幸福に繋がったのか、それとも偽りの愛を提供しただけなのか、彼にはわからなかった。言語製造黒魔術プログラミングブラックマジックの力は計り知れないものであり、その使い道についてさらに深く考えざるを得なかった。


次なる依頼が来るその日まで、翔は自分の行為の意味を問い続けることになるだろう。愛とは何か、幸福とは何か、その答えを見つけるために。

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