言語製造黒魔術

第四章 刹那の追憶

言語製造黒魔術（プログラミングブラックマジック）のプログラミングを完成させた黒輪翔（くろわかける）は、過去の依頼を通じてその強大な力とその代償の重さを痛感していた。黒魔術の使い方やその影響について深く考えながらも、翔は次第にその使い道について自らの責任と向き合っていた。

ある日、新たな依頼者が翔の元に現れた。その名はたかし。彼は海に行こうとすると強烈なめまいが襲い、どうしても海辺に行けないという悩みを抱えていた。たかしは、海を恐れる理由があるわけでもなく、ただただその症状に困惑していた。

たかしは翔の配信を見つけ、言語製造黒魔術（プログラミングブラックマジック）の力に希望を託した。自分の脳内の構造を書き換え、めまいの原因を解消することができるのではないかと考えたのだ。翔は最初、その依頼に対して慎重だったが、たかしの切実な願いに触れ、彼のためにコードを書き上げる決意をした。

翔はたかしに対して、魔術の適用を行うためのコードを用意し、細心の注意を払いながら実行に移した。プログラムが起動し、たかしの脳内に直接作用するその瞬間、翔は期待と不安を胸に抱えていた。

だが、予想外の事態が発生した。翔がプログラムを実行した結果、たかしの脳内の構造が確かに変わり、めまいの症状は軽減された。しかし、その副作用として、たかしの心の奥底に眠っていた恐怖や記憶が一気に蘇ってしまった。翔はその原因に気づかなかったが、次第にたかしの様子が変わり始めた。

たかしは、自分がなぜ海を恐れるようになったのか、記憶の中に埋もれていた過去の出来事に気づくことができた。彼の恐怖の根源は、幼い頃に津波によって弟のけんじを失ったことに起因していたのだ。たかしのPTSDは、その記憶が海に対する恐怖となって表れていた。

翔は、そのことを知り、たかしに対して心から謝罪した。彼は、たかしが海に対する恐怖の理由を知ることで、自身の内面と向き合い、過去のトラウマを乗り越える手助けをすることに決めた。翔は、言語製造黒魔術の力が単なる症状の改善にとどまらず、人の深層に影響を与えるものであることを再認識し、その使い方について改めて考え直さなければならないと痛感した。

たかしは、過去の痛みと向き合うことで、少しずつその恐怖を克服していった。翔の助けを得て、自分自身を取り戻しつつあったたかしは、やがて海に向かう勇気を取り戻すことができた。翔は、魔術の力を用いた治療がもたらす影響の深さと、その責任の重さを再認識しながら、次なる依頼に向けて心を新たにしていた。