第12話
「寒いね」
泰雅さんが微笑んで言った。
「そうですね」
私は微笑み返し、彼の手をしっかりと握った。
歩きながら、今日の出来事を思い返していた。
泰雅さんの存在が私を安心させてくれている。
怖かったけど、泰雅さんがいてくれたから乗り越えられた。
「どこも怪我してない?」
泰雅さんが心配そうに尋ねた。
「はい。大丈夫です」
私は微笑んで答えた。
手首を掴まれたところがまだジンジンと痛む。
だけど、これ以上心配かけたくない。
なにより、迷惑をかけたくなかった。
だから、バレないようにしてたつもりだったのに、
「…見せて」
泰雅さんが真剣な表情で言う。
「え?」
私は驚いて泰雅さんを見つめた。
「手首。痛いんでしょ」
泰雅さんの言葉に、心が少し揺れる。
「…どうして、」
手首のこと、誰にも話してないのに。
「咄嗟に押さえたから」
無意識のうちに押さえてしまってたみたいだ。
「でも、ちょっと強く掴まれただけで、怪我ってほどじゃ…」
私は言い訳をしようとしたが、泰雅さんの真剣な表情に言葉を飲み込んだ。
「いいから。見せて」
「…はい」
おとなしく手首を差し出すしか無かった。
「こんなになるまで…」
泰雅さんが拳を握っているのが目に入った。
怒りと悔しさが伝わってくる。
「私なら大丈夫です」
私は彼を安心させようとしたけど、効果はいまひとつみたい。
「ごめん。俺が近くにいながら」
泰雅さんの声には後悔が滲んでいた。
「助けてくれたじゃないですか」
あの時泰雅さんが助けてくれて、どれだけ嬉しかったか。
「助けるのが遅くなったせいで、怖い思いさせて」
「…確かに、怖かったけど、でも、今は泰雅さんがそばにいてくれるので平気です」
私は彼を見つめ、心からの気持ちを伝えた。
「陽菜、」
「それに、もうあの人と会うことはないと思います」
あんなふうに出ていったんだから、きっともう私の前に現れないはず。
そう願いたい。
「そうだね。あれだけ言ったから大丈夫だとは思うけど、まだ安心は出来ないよ」
泰雅さんの言葉に、少し不安が残る。
「え、どうして、」
「何を言っても、自分の方が陽菜とお似合いだって信じて疑わないから。また理由をつけて現れる可能性も捨てきれないよ」
泰雅さんの言葉に、彼の心配が伝わってくる。
「確かに…」
あの時、どうして俺じゃだめなんだって、
答えてたとしても、納得してくれなかったと思う。
一体どうすれば…。
心の中でため息をついた。
「また何かしてくるかもしれないから、しばらくの間は迎えに行くよ」
「え、でも、、」
ただでさえお仕事忙しくて休む暇なんてないはずなのに、私のためにそんな...。
今日だって私のせいで仕事終わらせて、、
迷惑ばっかりかけてる。
私の彼氏は成功したストーカーでした。 @hayama_25
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私の彼氏は成功したストーカーでした。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます