第6話

「何ですか?」

どうして笑うんだろう


「いや、なんでもない。こんな時間だし、そろそろ寝たら?」


「でも、寝ちゃったら泰雅さん帰っちゃう...」

「あぁ…うん。そうだね」


さっき、彼女なんだから我儘言ってもいいって言ってくれた。


甘えても、いいのかな。


「一緒に...って言ったら迷惑ですか?」

「…」


何も言ってくれない。


調子に乗って困らせてしまった。


「そ、そうですよね!ごめんなさい、今言ったことは忘れてください」


明らかに泰雅さんの顔が曇ってる。


「ごめん...」


「謝らないでください!困らせるつもりは全然なくて、言ってみただけですから!私こそ困らせちゃってごめんなさい」


「今、陽菜ちゃんと一緒に寝たら、きっと抑えられないと思うんだ」

「え、抑えられないって...」


そういう事、だよね....


「だから、陽菜ちゃんが寝るまではそばにいるよ」

「だ、大丈夫ですよ。明日も早いと思うので、帰ってもらっても...」


「ほんとに?」

「はい...」


「そう言うなら..分かった。じゃあね陽菜ちゃん」


ほんとは、まだ行ってほしくない。

「…、」


「ほら、行かないでって顔してる。そんな顔されたら俺、行けないよ」


「ご、ごめんなさい。私のことは気にせずに...」


「だから、陽菜ちゃんが寝たら行くよ。俺もなるべく、長く一緒にいたいからさ」


「泰雅さん...じゃあ、お願いします」

「お願いされました」


泰雅さんがいるからか、ドキドキして全然寝れなくて、結局3時ぐらいまで起きてしまった。


泰雅さんに申し訳なくて、早く寝ないとって思ったけど…


そう思えば思うだけ、寝られなくなってしまった。


「眠れない?」

「はい…」


泰雅さんは優しく微笑んで、私の手をそっと握った。


「俺の心配はしなくて大丈夫だよ。無理に寝ようとしなくてもいいから、リラックスして」


その言葉に少し安心して、私は深呼吸をした。


「ありがとうございます。でも、泰雅さんも疲れてるのに、」


「陽菜ちゃんのためなら大丈夫。眠るまで、ちゃんとここにいるよ」


その言葉に胸が温かくなった。泰雅さんの優しさに触れて、少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。


「私、夜は心細くなっちゃうから、泰雅さんがいてくれて嬉しいです」


「それなら良かった。じゃあ、もう少し話そうか?それとも、何か音楽でもかける?」


「うーん、少し話したいです。泰雅さん、最近何か面白いことあった?」


一週間会えていなかったから。

泰雅さんの話を聞きたい。


「そうだなぁ…」


泰雅さんは少し考えてから、最近の出来事を話し始めた。


話を聞いているうちに、私は少しずつ瞼が重くなっていった。


「陽菜ちゃん、眠くなってきた?」

「うん…少し…」


「じゃあ、もう少しだけ目を閉じてみて」


泰雅さんの優しい声に包まれて、私はゆっくりと目を閉じた。彼の手の温もりを感じながら、少しずつ意識が遠のいていく。


眠気がどんどん強くなって、意識が薄れていくのを感じていた。


まぶたが重くなり、もうすぐ完全に眠りに落ちるその瞬間、おでこに柔らかい感触が伝わってきた。


「ん…、」


ぼんやりとした意識の中で、泰雅さんがそっとおでこにキスをしてくれたことに気づいた。


心が温かくなり、安心感が広がっていく。


「おやすみ、陽菜ちゃん。いい夢を」

と、泰雅さんの優しい声が耳元で聞こえた。




その言葉を最後に、私は完全に眠りに落ちた。


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