第4話


「レアンナ、これから大切な話をする。聞いてくれるか?」

「…はい」

「まずは誤解を解かないといけないな」

「誤解、ですか?」


旦那様は頷く代わりにコーヒーを口に含んだ。

そしてゆっくりと話し始めた。


「1番の勘違いは、俺がレアンナのことを邪魔だと思っているということだ」

「え?」


そんなはずはないと否定しようと口を開くが、真剣な瞳に射抜かれて言葉にならない。

そんな私を見てから旦那様は話し続ける。


「俺はレアンナを拾ったあの日、お前に一目惚れをした」

「……はい?」


思わず聞き返してしまう。

一目惚れ、と聞こえた気がしたが気のせいだろうか。


「ただ、怖がらせたくなかったからレアンナには離れで暮らしてもらう必要があったんだ」

「怖がるって、何を…?」

「俺のことを」


旦那様がそう言った瞬間、背筋に悪寒が走る。

脳内で警鐘が鳴り、本能的にこの人から逃げたい衝動に駆られる。

何かがおかしい。

何でこんなにも旦那様のことが怖いのだろう。

先程まで感じていた恐怖とは全く感覚にいつの間にか呼吸が浅くなっていた。


「レアンナ」


いつの間にか私の目の前に膝をついた旦那様は私の手を取ると、それはそれは幸せそうに笑った。


「俺は吸血鬼なんだ。レアンナを怖がらせたくなかったからずっと距離を取っていた」

「きゅうけつき、」

「でも今更離れるとかいうならもう我慢しなくていいよな?」


そういうと旦那様は私の髪を優しく梳いて、そのまま首筋へと手を添えた。


「っい!」


瞬間、首筋に走った痛みに思わず声が漏れる。

旦那様は私の反応など気にする素振りも見せずに容赦なく首に噛みついた。

抵抗するよりも痛みに耐えるために旦那様の服を強く掴んでしまう。

涙で視界がぼやけ、体内から熱が奪われていくような気持ち悪さに吐き気を催す。


「レアンナ」


旦那様が私の名前を呼んだため顔を向けると、そのままゆっくりと唇が重なった。

その行為に思わず目を見開く。


「な、なんで……?」

「何でって、キスは好きな相手にするものだろ?」


さも当然かのように言うものだから私は何も言い返せなかった。

ただ呆然とする私に旦那様はまた優しく笑った。


「愛してる。絶対に逃がさないから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る