第3話 顔合わせ①

暇つぶしでやってみたいと思い、VTuber事務所に応募すると、

一般公開ではないテンションで撮った動画で羞恥を晒すも、

無事に採用が通り、SmileLive2期生としてデビュー目前の

ごく普通の女子高生、今野るな。

今日は、2期生と先輩方、スタッフさんたちとの初の顔合わせです。


東京都某区、都会のど真ん中にそびえ立つビル。

タレントが4人しかいない事務所とは思えないな。


今日はしっかりお洒落をしてきたつもりだ。

ボーイッシュな格好に、いつものレピドライトを首に掛けている。

自分についてはブサイクではないが、美人でもないということに自覚はあるので、

服でなんとかごまかそうとしている。


エントランスはエアコンが効いていて涼しい。最近は外が暑すぎるだけなのでは?

受付に、証明書を見せてエレベーターに乗る。


待ち合わせは10階。それにしても大きいビルだなぁなんて考えてるうちに

気づけば10階だ。


自分はそれなりのコミュ力はあると思う。学校でも陽キャ組なのだが、

今回はほんとに初対面の人でしかも大人、プラス男性もいる。

泣きっ面に蜂の後にゴキって感じだ。


「頑張れ!私!」

両頬をパチン!と叩き、扉をノックする。


「し、失礼しますぅ」

ちょっと震えながら扉を開けると、

「お!はじめまして〜。今回の担当の駒井です〜」

メガネを掛けた30過ぎくらいの男の人が現れた。ゆるい感じの人だ。

てか、身長、高!

おそらく190cmはありそうだ。

「は、はじめまして!今野るなです!」

きちんと挨拶をする。

「あ、今野さんですね。そこの椅子に座って待っててください〜。

後から来た人にも伝えて頂けると幸いです〜」

「は、はいっ!」

私がそう言うと、駒井さんは奥の部屋に入っていった。


どうやら私が一番のようだ。

スマホをつけて時間を確認すると、待ち合わせの1時間前だった。

早ずぎたかもしれない。でも、早い分には良いだろうということで。

胸元のレピドライトを見る。

お守りとして持ってきて良かった。両親を思い出して落ち着く。


それから少しすると、

「失礼します」

男の人が入ってきた。ナチュラルなタキシード風の格好をしている。

イケメンだぁ。

「鳥座です。はじめまして。」

違う違う!ちゃんと伝えないと!

「は、はじめましてぇ。今野です、そ、そこの席に座っててと担当の方から〜」

「あ、そうなのね。ありがとうございます。」

丁寧な人だ。


気まずい空気が流れていると、また扉がノックされた。

「失礼します!あ、もう二人来てたんだ!はじめまして、小梨奏人です!

以後お見知りおきを〜!」

白Tに青い七分袖にジーパンを合わせている。

「は、はじめまして、今野です!」

雰囲気に流されて声を張ってしまった。

「はじめまして鳥座です。」

小梨さん、すごく元気な人だ。感じ悪いタイプではない。


それから数分後、

『失礼します。」

と、二人の女の子が入ってきた。

「はじめまして、神田ののです!」

「はじめましてぇ、天ノ川リリです。」

例のごとく3人とも挨拶をした。

神田さんが言う。

「天ノ川さんとはエントランスでばったり会っちゃって!えへへ」

「そうなんですよ、神田さんが話しかけてくださって」

天ノ川さんが続けた。

神田さんは、黒字にロゴの書かれたTシャツに、水色のスカート。

天乃川さんは、フリルの施されたワンピースだ。

それにしてもみんなお洒落だな〜。つい気になってしまう。


すると、駒井さんが戻ってきた。

「お、揃ってますね〜。今回の担当の駒井です〜。

それでは、始めましょうか〜」





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