第33話 姫様?


「分かりました。約束しましょう。貴方あなたはわたくしが必ず助けてあげますわ!」


 そう言うと、彼女は鼻息荒く拳を握り締めている。どした!?


「お前、俺の話聞いてなかったのか? この足枷が外せないと俺は此処から出られないんだ。それにお前に何のメリットがあるんだ? 金なら無いぞ!」


 俺はポケットから財布を出すと、逆さにして振って見せた。


「お金などいりません! 貴方の力が必要なのです。先程、魔物との戦闘を全部見させて頂きました」

「え? もしかして前に言っていた全部見たっていうのは……俺のチ〇コじゃなくて戦闘のことだったのか!?」


 俺は驚いて彼女の顔ををまじまじと見た。


「っぁ……な、な、な、み、み、見てませんっそんなモノっ……遠くの岩場の陰から覗いていただけなんですからっ、み、見えるはずがありませんっ、ふんっ」


 何で茹でダコみたいに真っ赤になってんだ?


「お、おう……ならよかった。で、どうして俺の力が必要なんだ? 俺程度の強さの奴なんてどこにでもいるだろ?」


 この世界に来たばっかりの俺の強さなんて底辺だろう。


「あ、貴方、自分の強さが分かってないの!? ゴブリンの大群をたった一人で殲滅したばかりか、ダークオークまで倒したのよ!? ダークオークといったらオークが束になってかかっても敵わない程強いの! それを一人でしかも素手で倒すなんて聞いたこともないわ! バカなの!?」


 よく分からんが、興奮する彼女に叱られてしまった。

 意外と俺は強かったのか? それともこの世界の人間がそれほど強くないのか?


「ま、まあ落ち着け……本題に戻すが、俺の力が必要ってどういうことだ?」


 息の荒い彼女をなだめて詳しく話を聞こうとしていた時、遠くから数人が騒がしく走って来るのが見えた。


「あいつらは確か……」

「あら、やっと来たのね、ふふ」


 息せき切って俺達の前に到着したのは、やはり先程彼女を追っていた、スタイルのいいメイド服の女と兵士二人であった。


「姫様っ、ご無事で! 心配しましたぞ! お怪我はありませんか!?」


 年配な方の兵士が、息を切らせながら問う。


「大丈夫よ。あなた達も無事で何よりですわ。それより、ついに見つけましたの」


 どうやら、彼らはこのゴスロリ少女の仲間だったようだ。

 というか、彼女のことを姫様って……? 嫌な予感が。


「お嬢様……まさか、この方が……」


 長く美しい銀髪のメイドさんが、クールな眼差しを一瞬見開き、俺を上から下に興味深そうに見てくる。美人さんに見つめられると何かゾクゾクするな。


「そう、このお方が、わたくしの捜し求めていたですわ」

「……は??」


 何処かで聞いた、ろくでもないワードが耳に入ってきて、思わず間抜けな声が出てしまった。

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