第28話 ドロップ品


「おっ? 何だ? 変なものが落ちてるぞ?」


 黒オークの衝突で出来た瓦礫の前に、三つのモノが地面に落ちていた。


 まず目に留まったのは、どこか懐かしい薄緑色のガラス瓶。ラムネ瓶と少し似てるがビー玉は入ってない。


「おおっ、コーラじゃないか!?」


 急いで手に取ってよく見ると、あの有名なロゴは入ってないが、中の液体はあの独特なカラメル色素の色だ。これもラムネ同様、水滴が滴って、まるで飲み頃だと伝えてくるようだ。

 これはコーラでほぼ間違いないだろう。

 喉が渇いていて今すぐ飲みたいが、楽しみは後にとっておこう。


 二つ目に気になったのは、黒い棒状のモノだ。


「……何だこれ?」


 俺の親指よりも太くて黒い物体が山積みになって、鈍く黒光りしている。

 その形は不規則で、見ようによってはアレに見えなくもない……。


 俺は慎重にソレを摘まむと、恐る恐る鼻に近づけ、クンクンと匂いを嗅いだ。

 ほのかに甘い香りが鼻に抜ける。


「これはっ……間違いない」


 ボリッ、ボリッボリッボリ


「うましっ!」


 半分食べたところで、あまりの旨さに食べかすを飛ばしていた。

 

 咀嚼そしゃくする度に黒糖の優しく複雑な甘みが口いっぱいに拡がる。


 素朴な味ながら、揚げた小麦粉の香ばしい薫りと共に、僅かに黒糖の酸味も効いていて、これはまさしく極上のカリン糖だ。


 残りの半分を口に放り込み、幸せを噛み締めながらゆっくりと味わっていると、それは突然起こった。


 心臓が一瞬「ドクンッ」と大きく跳ねると、身体から得体の知れない力が満ち溢れ始めたのだ。


「あぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


 俺は突然の身体の変化に動揺し立ち上がると、有り余るエネルギーを放出するように絶叫していた。



 ――数分後。


「はぁはぁ……やば……死ぬかと思った……」


 身体が燃えるように熱くなり、そこらじゅうを転げ回った後、俺はぐったりと座り込んでいた。


「もしかして、アレに毒でも入っていたのか? くそっ」


 悪態をつきながら、服に付いた汚れをはらおうとして、自分の腕の違和感に気づきギョッとする。


「太っ! 誰の腕!? 俺の!? こわっ」


 なぜか腕がたくましくなっていた。

 まさかと思い、ももや胸、首回りも確認するとやはり、身体全体が逞しくなっている。

 破れスーツが身体にピタリと張り付いて、より可笑おかしな格好となってしまった。


「これはいったい……ま、いっか。逞しい方が女の子にモテそうだしな!」


 気を取り直して、ウキウキときつくなったベルトを外し、ズボンを下げた。


「……」


 俺は周りをサッと見渡し、誰も見ていないのを確認すると、そっとズボンを上げた。


「くっそぉぉぉ……」

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