第25話 新たなスキル


 ブンッという音と共に半透明のステータスパネルが目の前で勝手に開いた。


 突然のことに驚いたが、激しい殴打を防御しながら、藁をもすがる気持ちで覗き見る。


「おっ!? 新たに何か追加されている!?」



【ネーム】

 山守天斗やまがみてんと


【職業】

 大罪人


【ユニークギフト】

 スイーツ男子:魔物を倒すと魔石の替わりに甘いモノがまれにドロップする。


【スキル】

 パンチラッシュ:パンチを重ねる度にパンチが少し重くなる。

 グラビティ:功罪の足枷の重さに応じ重圧を与える。new!


【装備】

 功罪の足枷:罪を犯すと鉄球が重くなり善行を行うと軽くなる。

 特殊武器としての使用も可能。

 この足枷を付けている限り流刑地から出られない。

 足枷を外す条件は○○○○○○○○。



 ステータスパネルにはスキルが一つ追加されていた。

 グラビティ? 足枷の重さが関係する魔法だろうか。

 このままでは黒オークに撲殺されるのは時間の問題だ。

 迷ってはいられない。

 一発本番でやってやる!


「グラビティ!!!」


 狂ったように殴り続けている奴を睨みつけて、俺は叫んだ。


 すると、黒オークは突然動きをピタリと止め、ガクンと膝を折り四つん這いとなった。

 奴は何が起こったのか分からないようで、目を血走らせ立ち上がろうと藻掻き叫ぶも、一向に手足が地面から離れる様子はない。


「はは……やった……やったぞ」


 俺は、魔法の恐ろしい程の効果に歓喜し、ふらつきながらも立ち上がり、ガッツポーズをした。


 いま奴はむさぼり喰う筈だった獲物を前に、醜いブタ面をさらし土下座をしている。これほどの屈辱はないだろう。

 俺は散々痛めつけられた借りを返すべく、これ見よがしに奴のゴツイ頭をパシパシと叩いてやった。

 すると奴は、怒りに顔を真っ赤にし、噛みつこうと牙を剥き暴れるも、俺は余裕で避ける。


「ふふ、これが功罪の足枷の重さだ。思い知ったか! はっはっはっ……」


 俺が勝利を確信し、再び奴のブタ鼻をペシペシ叩いている時ふと足元を見ると、鉄球の白く点滅していた光が次第に弱くなりつつあった。


「え?」

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