第13話 転移直前


「俺が……強くなってる……のか?」


 もしかして、ピンクのスライムとデカい亀の魔物を倒したから、強くなったのだろうか?

 それとも、イチゴ大福とメロンパン食べたからとか?


 ここは異世界のダンジョンだし、経験とかアイテムで強くなる可能性が高そうだが。


「自分の能力とか分かると便利なんだけどな……」


 ん? 待てよ? そういえば、女神にボコボコにされた後、このダンジョンに転移させられる直前に、女神が何か言っていたような……。




 ――強制転移直前のパルル神殿――


「この世界で広く崇拝される、最も美しき女神に対する数々のハレンチ行為……この罪は万死に値します。しかしながら、あまりに美しき女神に夢だと勘違いし、触れたいと思うのも若い男性のさがです。それはまた、美し過ぎる存在であるワタクシの罪と言えなくもありません、ふふっ」


 俺は横たわり、ぼぉっと女神パルルの話を聞き流していた。


「よって、減刑のうえ、特別にを与えます。あちらに転移したら、確認してくださいね。それで許してさしあげます。楽しみにしていて下さい。ふふっ」


 何か嫌な予感しかしないのだが。


「では、さっそく難攻不落のダンジョンへの転移を開始します。何か最後に言い残したいことがありますか? 今ならまだ、土下座して「勇者にして下さい」と泣いて赦しをえば、慈悲深いワタクシが許してあげる可能性も、少しだけあるかもしれませんよ?」


 女神は毅然としながらも、なぜかうれいを含んだ表情にも見えた。

 

 勇者? まっぴら御免だね……


「……あ、最後に甘いものでも食べたかったな……」


 俺は無意識に独りごとを呟いていたようだ。


「……それだけですか……それでは、お別れです……さよなら……天斗てんと


 女神がそう小さく呟き、詠唱を行うと、白く優しい光に包まれた俺の身体がふっと軽くなった後、魔法陣が赤く染まり、ダンジョンへと俺は転送された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る