第8話 武器?


 ガキンッッッ


「うわぁっ!」


 亀の恐ろしい噛みつきを、寸でのところで横に転がって避けた。


 今のは正直やばかった……。


 奴の口は、まるで金属だ。

 ナめてたら食いちぎられて死ぬぞ。


 俺は急いで起き上がると、ダッシュで距離をとり、誰も居ない地面に思いっきりボディプレスをしてしまった……。


「はうっ、は、腹がぁぁぁぁぁっっっ! くっそぉっ、この鉄球さえなければ、余裕で逃げる事だってできるのにぃっ……うわっ」


 今度は俺の足を噛みちぎろうと狙ってきた!

 俺は命からがら亀から距離をとる。


「はぁはぁ、落ち着け俺」


 奴の動きはのろい。普通に俺が歩いて逃げられる速さだ。逃げながら策を練れば余裕じゃないか?

 たかが亀一匹にてこずってなどおれん。

 俺はダンジョンを脱出しないといけないのだ。


 俺は時計回りに逃げながら、亀の弱点を探す。


 ひらめいた!


 奴はきっと噛みつき以外攻撃してこない。

 ならばと、俺は奴の後ろに回りこんで、甲羅の上に乗ってやった。

 そして、奴が首をもたげたタイミングで奴の脳天に、


 パンチパンチパンチ! パンチパンチパンチ! パチパチパンチ!


 ちっ! 全く効いてない! 恐ろしく硬い皮膚だ。どうする!? 

 何か武器になるものは無いのか!?

 周囲を探すと、すぐ近くに鈍く黒光りするものが――


「そうか!? コレならっ!」

 

 俺は亀の上から転がり降りると、鎖に繋がれたやたら重い鉄球をなんとか持ち上げ、奴の頭に叩きつけると、鈍い音がして全く動かなくなった。


「おぉ! 使えるじゃないかこの鉄球」


 亀はシュルシュルと消えていき、後にはドーム状のモノをドロップした。


 俺は急いでそれを拾い上げると、まるで焼きたてのようにふっくらホカホカ。

 たまらず匂いを嗅いでみた。

 クンクン……!?


 間違いない。

 

 この甘いクッキーのようなかぐわしい香りは――


「メロンパンだ! いただきまっす!」


 ちょうど空腹で甘いものを欲していた俺は、我慢できずにそれを頬張った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る